はじめに|「一歩ずつ進む」はジョーダン自身の考えか
「何かを達成する方法は、一歩ずつ着実に進むことだ」という文章が、マイケル・ジョーダンの名言として紹介されています。世界最高峰のバスケットボール選手として知られる人物が、結果を急がず目の前の行動を重ねる大切さを語った、と解釈される言葉です。
以前は、この日本語に対応する英語の原文や著書の掲載箇所を特定できませんでした。しかし今回、ジョーダン本人の著書からの引用だと明示された大学の教育資料が確認できました。原文には日本語の短句だけでは見えにくい、具体的な目標設定の話が続きます。
そこでこの記事では、著書名と原文の掲載例を確認しながら、本人が何について述べたのかを読みます。大学が紹介する著書の抜粋と、出版された原著のページを直接読むことは区別し、分かる範囲だけを根拠にします。
原文候補は「Step by step」という短い言葉
米国コネチカット大学のRenzulli Center(才能教育研究)は、ジョーダンの1994年の著書から、短期目標を設定することに関する文章を紹介しています。その末尾に“Step by step, I can’t see any other way of accomplishing anything.”という英文が含まれています。
直訳に近づければ「一歩ずつ。何かを成し遂げるうえで、それ以外の方法は私には見えない」という意味です。日本語の「これ以外に方法はない」と比べると、英語の主語はあくまで「私には見えない」であり、本人の経験に基づく言い方であることが分かります。
この英語と日本語の流通句は主旨が近く、元になった可能性が高い資料と判断できます。ただし、日本語の「何かを達成する場合にとるべき方法はただひとつ」という長めの表現が、誰によって、いつ翻訳されたかは未確認です。訳文の成立と英語の原著は別に追う必要があります。
1994年の著書『I Can’t Accept Not Trying』
CiNii Booksの書誌によると、正式な書名は『I Can’t Accept Not Trying: Michael Jordan on the Pursuit of Excellence』で、マイケル・ジョーダンの文章をマーク・ヴァンシルが編集し、1994年にHarperSanFranciscoから刊行されています。存在が確認できる本人名義の書籍です。
日本の大学図書館の所蔵情報も同じ書誌に掲載されており、ISBNは0062511904、全36ページの著作とされています。単なるインターネット名言集の架空の書名ではないことを確かめられます。
一方で今回直接見たのは、大学の教材として引用された文章と、図書館の書誌です。著書の現物の該当ページ番号や前後の全文は直接照合できていません。著作に遡れる根拠が得られたことと、特定版のページ画像を確認したことを同じにしないのがこの記事の出典判定です。
本人が語ったのは、短期目標を積み重ねる方法
コネチカット大学の引用文では、ジョーダンは大きな夢を持つ一方で、実際には達成可能な短期目標を設定して一つずつ進んできたと説明しています。最初から遠くにある理想だけを見ていたのではなく、その時点で何ができるかに焦点を当てたのです。
高校で上級チームのメンバーに入れなかった経験をきっかけに、次は先発になれるように練習するという目標を立てた話も紹介されています。できるようになれば、次の目標を考える。失敗によって自分の価値が決まるのではなく、次の具体的な行動を考えるという姿勢が読み取れます。
また、同じ引用文には医師を目指す学生の例が登場します。生物の成績が低ければ、まず少し上げることを目指し、次に別の科目へ取り組むという考え方です。壮大な目標を小さな学習課題に分けるという、スポーツに限らない説明になっています。
「一歩ずつ」とは、ただ遅く進むことではない
一歩ずつ進むことは、いつまでも小さな目標しか持たないという意味ではありません。ジョーダンの文章では、最終的な到達点を意識しながらも、今日取り組める課題を設定しています。大きな目的と短期的な手段を両方持つことが要点です。
例えばバスケットボールなら、優勝という目標だけを掲げても、次にどんな練習をすればよいかは分かりません。シュート、守備、連携といった具体的な課題を分け、改善を確かめる必要があります。これは記事の一般的な例ですが、長期目標を小さく分解するという本人の説明に対応する考え方です。
同じ努力を続けていても状況が変わらない場合、練習方法を変えたり、助言を求めたりする必要があります。小さな目標は見直してよいものです。一歩ずつ進むことと、同じ手順を何があっても繰り返すことは違うと理解できます。
失敗と自信の関係をどう読むか
ジョーダンは、短期目標を達成するたびに自信が増したという趣旨も述べています。遠すぎる目標だけを成功の基準にすれば、そこへ至る途中の努力がすべて失敗に見えてしまうことがあります。途中で確かめられる小さな進歩は、学びを続ける助けになります。
その一方で、短期目標を達成できないこともあります。だからといって人生全体の価値がなくなるわけではない、と本人の説明は示唆しています。目標を達成するかどうかと、人間としての価値を分ける視点が、いわゆる根性論とは異なるところです。
能力がある人なら誰でもジョーダンのように成功できる、という意味でもありません。家庭環境、健康、教育機会などの違いがあります。具体的な目標を持つことは支えになる一方、成果を必ず保証する方法ではないと考えるのが適切です。
仕事や日常生活で使うには
学び直しを始めるなら、「一年で専門家になる」とだけ考えるのではなく、今週は一つの基礎概念を説明できるようにする、と目標を細かく分けてみる。できたかどうかを自分で確かめられれば、次の行動が分かります。前に進んだかどうかを測れる目標が助けになります。
仕事で新しい企画を進める場合も、一度に成功を狙う前に、小さな検証を設計してみる。誰に聞くべきか、どんな仮説を確かめるか、最初の実験で何が分かるかを考える。挑戦を行動へ変える仕組みを作ることが重要です。
ただし目標を細分化しすぎて、何のために動いているのかを見失うこともあります。必要なときには大きな目的を振り返り、進め方を変える柔軟さも必要です。一歩ずつ進むことは、方向を見直してはいけないという意味ではないのです。
出典の確認状況とまとめ
判定:ジョーダンの1994年の本人名義著書と英語引用を大学研究機関の抜粋で確認。書籍現物の該当ページおよび日本語訳の成立は未照合(要検証)。英語で「Step by step」と語った具体的な文脈が分かったため、以前より出典の所在が明確になりました。
資料はコネチカット大学の引用・教育資料、同研究機関の目標設定に関する解説、CiNii Booksの書誌です。大学資料は引用文の文脈を、図書館資料は書誌事項を確認するために使いました。原著現物を直接読んだことにしていません。
ジョーダンの言葉が教えるのは、ただ努力し続ければ必ず勝てるということではなく、大きな目標を今日できる行動に分け、自分の成長を確かめる姿勢です。ほかの名言の確認は出典監査索引、判定基準は出典ステータスの読み方で説明しています。