はじめに
「どこか変わっている人。ひたすらまじめにやってきた人」。ソフトボール日本代表を率いた宇津木妙子は、異なる個性の選手が一緒にいることを肯定した。全員が同じ型にはまっているチームでは、苦しい場面で対応できないこともある。この言葉には、現場を知る指導者の実感がある。
ただし「変わった人を集めれば必ず勝つ」という単純な話ではない。宇津木は、選手の性格を見ながら指導を変え、考える力を育てることの大切さも語っている。名言の前後を読むと、個性を尊重することと指導者の責任を果たすことがつながっている。
原典はNPO法人コーチ道の本人インタビュー
この言葉は、NPO法人コーチ道の公開する「リレーインタビュー 第1回 宇津木妙子さん(後編)」に、そのまま掲載されている。発言は、理想の指導者やスポーツ界の課題を尋ねられた一連の質疑応答の後半で登場する。
質問は「指導者のみなさんに向けてメッセージをお願いします!」というものだった。宇津木は指導者も勉強し続けるべきだと述べ、選手の方が新しい情報を知っている場合があること、教えすぎると選手が考えなくなることに触れた。個性の話は、指導方法を柔軟に変えるべきだという主張の流れに置かれていた。
そのうえで、まじめな人も少し変わっている人も必要であり、苦しいときに予想外の個性が助けになる場合があると述べる。旧記事はこれを一般論として扱っていたが、出典は抽象的な成功哲学ではなく、選手の能力をどう生かすかという指導現場の問いだった。
宇津木妙子のチームづくりの背景
笹川スポーツ財団が2021年に実施した本人インタビューによると、宇津木は日立高崎のチームを率いたのち、日本代表監督として2000年シドニー五輪の銀メダル、2004年アテネ五輪の銅メダル獲得に関わった。トップレベルの選手を組織する経験を持つ指導者である。
同インタビューでは、選手が監督の顔色をうかがうことを知り、自分の目元が見えないサングラスをかけるようになったという話もしている。指導者の表情が選手の判断へ影響する可能性に気づき、選手が自分で考えられる環境をつくろうと試したという具体例だ。
さらに、相手チームの力を見極め、日本の守備力を伸ばすという考えを持ったことも語られている。ここでは「長所を活かす」という方針が、単なる個人への優しい言葉ではなく、競技上の戦略につながっている。
違う個性があることは、なぜ役立つのか
チームに似た考え方の人ばかりが集まれば、意思決定が速くなることはある。その半面、全員が同じ見落としをしても気づきにくい。普段は少数派の意見でも、予想外の状況では別の方法を提案できる。異なる見方を残しておくことが、選択肢を広げることはある。
例えば、慎重に準備を重ねる選手と、思い切って挑戦する選手では、緊張する場面で役に立つ力が違うかもしれない。ただし「まじめな人は守備」「変わった人は攻撃」と決めつけては、個性を尊重するどころか新しい型を押しつける。本人の実際の能力と状況を見て役割を考えるのが適材適所だ。
多様性は、単にさまざまな人が同じ場所にいれば成果が出るという魔法でもない。違いがあるから意見がぶつかることもある。そのときに、互いの話を聞き、意見を試せる仕組みがなければ、良さは十分に発揮されない。個性を活かす仕事は、チームを率いる側にもある。
仕事や学習の場でどう活用するか
会議でいつも同じ人が発言するなら、別の立場から問題を見ている人にも考えを聞いてみる。相手が目立つ性格かどうかでなく、仕事や情報への接し方が違うかどうかを考える。発言量と貢献の大きさを同じものと考えないことが役に立つ。
新人を教える場面でも、正解をすべて先に渡すより、なぜその判断をしたのか尋ねる方法がある。もちろん安全に関わる手順なら説明が必要だが、考える余地をつくることにも価値がある。これは宇津木の発言からの現代的な応用であって、一つの万能な指導法を証明する話ではない。
また、個性を理由に無理な役割を押しつけないこと。本人がやりたいことと得意なことを確かめ、必要なら配置を見直す。適材適所は他人を一度で見抜く技術ではなく、観察と対話を続ける過程だと捉えたい。
まとめ・出典

宇津木妙子の「変わっている人も、まじめな人も必要」という言葉は、NPO法人コーチ道の本人インタビューに原文を確認できる。文脈は、指導者が選手を観察し、各人の強みを活かしながら考える力を育てるという話である。出典状態は「原典確認済み」とした。
原典:NPO法人コーチ道「リレーインタビュー 第1回 宇津木妙子さん(後編)」/人物背景:笹川スポーツ財団「ソフトボールを通して伝えたい“生きる力” 宇津木妙子」(2021年取材)。インタビューの発言のうち記事の主題に必要な部分だけを引用し、他の意見すべてを現代の一般原則として承認したとは扱わない。関連記事:宇津木妙子「弱みの活かし方」。出典状態の読み方。