はじめに
「己の時代の精神をもたぬものには、その時代はまったくの不幸となる」と訳されるヴォルテールの言葉があります。
原文は「Qui n’a pas l’esprit de son âge / De son âge a tout le malheur」。ここでの âge は「時代」とも読めますが、詩全体では自分自身の年齢・人生の時期が重要です。
「Si vous voulez que j’aime encore」の中の二行
この二行は、老いゆくヴォルテールが若さ、恋愛、時間について歌った詩の中にあります。時間が自分の手を取り、恋の季節から退くよう告げる。その流れで、自分の年齢にふさわしい精神を持たない者は、その年齢の不幸をすべて味わう、と歌います。
「時代に迎合せよ」という意味ではない
一文だけを見ると「時代精神に適応しなければ不幸になる」という社会論にも見えます。しかし周囲には、若者には若者の情熱を残し、人生の別の時期には別の知恵があるという話が続きます。
さらに詩では、失われていく恋愛の代わりに「友情」が自分を助けに来ます。老いを単なる喪失ではなく、関係のあり方が変わる時間として描いているのです。
まとめ
この言葉はヴォルテールの真正な詩句です。ただし「時代に合わせろ」という一般論に固定すると、原詩の老いと時間の文脈が消えてしまいます。
人生の各時期には、それぞれの喜びと知恵がある。そう読むと、この二行はずっと人間的な言葉になります。