原典は『Zahme Xenien VIII』の四行
「心が開いている時、この世は美しい」という言葉には、ゲーテの原文を確認できます。東京ゲーテ記念館によれば、詩集に収められることの多い『Zahme Xenien』第8巻に次の四行があります。
Nur wenn das Herz erschlossen,
Dann ist die Erde schön.
Du standest so verdrossen
Und wußtest nicht zu seh’n.
冒頭二行を直訳に寄せれば、「心が開かれているときにだけ、そのとき大地は美しい」といった意味です。日本語の「この世は美しい」は、die Erde を広く「この世界」と受け取った訳と考えられます。
よく知られた二行の後に、もう二行ある
日本語では前半二行だけが独立した名言として知られています。しかし原文には、「あなたは不機嫌に立っていて、見ることを知らなかった」という趣旨の後半二行が続きます。
この後半を読むと、世界の美しさが外側の条件だけで決まるのではなく、見る側の状態によって何が見えるかが変わるという構造がはっきりします。
「ポジティブに考えれば世界は美しい」だけではない
この詩を、嫌なことを無視して前向きになればよい、という単純な楽観論にする必要はありません。原文が示しているのは、心が閉じた状態では目の前にあるものを「見る」こと自体が難しくなる、という感覚です。
環境を美化するのではなく、自分の認識の仕方も経験の一部であると気づく。そう読むと、「心を開く」は現実逃避より、世界との接触を取り戻す言葉に近づきます。
出典状態
出典確認済み。 ゲーテ『Zahme Xenien VIII』に原文を確認できます。現在よく知られる日本語は、四行のうち冒頭二行を中心にした訳です。
出典状態の基準は名言の出典ステータスの読み方、ほかの監査記事は出典から名言を探すで確認できます。
出典メモ:Johann Wolfgang von Goethe, Zahme Xenien VIII. 東京ゲーテ記念館「『こころを開いているときだけ、この世は美しい』の原文は?」では、Max Hecker編 Goethes Sprüche in Reimen. Zahme Xenien und Invektiven(1908)を示しています。
『Zahme Xenien』やゲーテのほかの詩をたどるには、ゲーテの人物・作品ガイドへ。「心が開いている時、この世は美しい」は四行詩の冒頭二行をまとめた訳で、後半には「見ることを知らなかった」という趣旨が続きます。現実を無視して前向きでいなければならないという指示とは分けて理解できます。