ショーペンハウアー「人はすべてを忘れられる。ただ自分自身は忘れられない」|原典と本当の意味

はじめに

「なんであれ、人は忘れることができる。ただ自分自身、己自身の存在を忘れることはできない。」この言葉には、ショーペンハウアーのドイツ語原文として対応する文章があります。

原文は「Alles, alles kann einer vergessen, nur nicht sich selbst, sein eigenes Wesen.」。ここで重要なのは、最後の Wesen が単なる「存在」ではなく、「本質」「性質」とも読めることです。

原典では「性格」の議論に置かれている

この一文の直後でショーペンハウアーは、人間の性格は根本的には矯正できないという自説へ話を進めます。したがって、この言葉を「自己意識だけは失われない」という抽象的な存在論として読むより、何を忘れても自分自身の性質から完全には逃れられない、という文脈で読む方が自然です。

流通する日本語との違い

「己自身の存在」と訳すと、SNS時代のアイデンティティや自己認識の話へ展開したくなります。しかし、それは原典からかなり離れます。

ショーペンハウアーがここで問題にしているのは、人間の性格や本質の持続性です。友人との関係を例に、以前と同じ条件なら同じ行動が繰り返される可能性を論じています。

まとめ

この言葉はショーペンハウアーの真正な文章です。ただし、より正確には「人は何もかも忘れられる。ただ自分自身、自分自身の本質だけは忘れられない」と読むべき言葉です。

短い名言だけを見ると自己認識の話に見えますが、原典へ戻ると「人間の性格はどこまで変わるのか」という、まったく別の問いが見えてきます。

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