はじめに
「人は社会に慰めと有用性と庇護を求める」。これはフランシス・ベーコン『学問の進歩』に確認できる真正な一節です。
一文だけなら「人間は支え合って生きる」という一般的な社会論にも見えます。しかし原典では、この三つから社会生活に必要な三種類の知へ話が進みます。
会話・交渉・統治
ベーコンは社会の主要な働きを、会話、交渉、統治の三つに分けます。そして人が社会に求める「慰め・有用性・保護」に対応して、行動・ビジネス・国家について異なる知恵が必要だと考えます。
つまりこの言葉は孤独を避けるための友情論ではなく、市民社会をどう生き、どう動かすかという「civil knowledge」の分類の入口です。
一種類の賢さでは足りない
人付き合いが上手でも、交渉や仕事に強いとは限りません。仕事に強くても、統治の知恵があるとは限らない。ベーコンはこれらがしばしば分離すると指摘します。
現代風に言えば、対人能力、事業能力、公共的な判断力は別の能力であり、それぞれ学ぶ必要があるということです。
まとめ
「人は社会に慰め・有用性・保護を求める」は真正なベーコンの言葉です。
社会を一つの漠然とした「つながり」と見るのではなく、会話・交渉・統治という異なる営みへ分解して考える。そこにベーコンらしい分析的な視点があります。
原典:フランシス・ベーコン『The Advancement of Learning』(1605年)第二巻、Civil knowledge の節(XXIII.2)。原文の “comfort, use, and protection” と、会話・交渉・統治の三分類を照合しました。日本語は原文の趣旨を示す訳で、特定の既刊和訳の転載ではありません。