はじめに
「幸福はその人の受ける苦しみの最小量によって測られなければならない」と流通する言葉には、『エミール』の明確な原典があります。
ルソーは「最も幸福なのは最も苦しみの少ない者、最も不幸なのは最も楽しみの少ない者」と述べ、この世の幸福は消極的な状態であり、苦痛の少なさによって測られる、と続けます。
重要なのは「欲望と力」の差
この直後、ルソーは幸福を欲望と能力の関係から考えます。欲望は欠如を意味し、欲望が自分の力を大きく越えれば苦しみが増える。
だから真の幸福は、欲望をただ消すことでも、能力を際限なく増やすことでもなく、欲望と力の差を小さくし、両者を均衡させることにあるとします。
まとめ
この名言は真正ですが、「苦労を減らせば幸せ」という単純なストレス削減論ではありません。
ルソーが見ているのは、欲望が能力を越えて膨張するときに生まれる不幸です。幸福論の核心は、苦痛の少なさだけでなく、欲望と自分の力の釣り合いにあります。
原典と出典状態
ルソー『エミール』第2編のフランス語校訂本文に「Le plus heureux est celui qui souffre le moins de peines」とあり、続けて欲望と能力の均衡を説明します。単なる快楽の最大化でも、欲望の全面否定でもなく、欲望が自分の力を越えたときの不幸を問題にする文脈です。