「虻蜂取らず(あぶはちとらず)」は、二つのものを同時に得ようとして、結局どちらも得られないことを表すことわざです。
「虻蜂取らず」の意味
『デジタル大辞泉』では、「二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと」「欲を出しすぎると失敗すること」のたとえとされています。
ポイントは、単に「複数のことをするな」という意味ではありません。二つを同時に狙った結果、どちらも取り逃がすという失敗を表します。
古くは「虻も取らず蜂も取らず」
『精選版 日本国語大辞典』では、古い形として「虻も取らず蜂も取らず」が示されています。確認できる実例として、1769年の俳諧『吾妻録』にこの形が見えます。
現在一般的な「虻蜂取らず」という短い形については、1836〜38年の人情本『花の志満台』の用例が挙げられています。
なぜ「虻」と「蜂」なのか
ここは、分からないことを分からないままにしておく必要があります。旧記事では、日本の農村社会で虻や蜂に接する機会が多かったことから生まれ、さらに商人へ広がったと説明していましたが、その由来を裏づける資料は今回確認できませんでした。
『ことわざを知る辞典』も、「なぜ虻も蜂も取ろうとするのか、ことわざだけではよく分からない」と説明しています。もっともらしい物語を補うより、意味と確認できる古い用例を分けて示すほうが正確です。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」との関係
意味の近い表現に「二兎を追う者は一兎をも得ず」があります。ただし、こちらは西洋のことわざが幕末から明治期に日本へ入り、広まったものです。
『ことわざを知る辞典』では、西洋由来の「二兎を追う者は一兎をも得ず」が普及する一方、古くから使われた「虻蜂取らず」が次第に耳にされにくくなったと説明されています。
使い方の例
- 二つの案件を同時に取りに行き、どちらにも十分な対応ができなかった。
- 二つの目標へ欲張って手を伸ばし、結局どちらも達成できなかった。
- 「虻蜂取らずにならないよう、優先順位を決めよう」と注意する。
確認した資料
- コトバンク「虻蜂取らず」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・ことわざを知る辞典)
- コトバンク「虻も取らず蜂も取らず」
- コトバンク「二兎を追う者は一兎をも得ず」
ほかのことわざ・古典語句も、今後このサイトの「世界の物語と言葉」アーカイブとして順次整理していきます。