「みんな失敗を厭うもんだから、成功のチャンスも少ない」。本田宗一郎の名言として紹介されるこの言葉を、「とにかくリスクを取れば成功する」と読むと、重要な部分が抜け落ちます。出典とされる井深大の著書では、本田が知識を得る方法として「見たり、聞いたり、試したり」を重視し、とりわけ自分で試すことの重要性を説いていたと紹介されています。
出典の手掛かり:井深大『わが友本田宗一郎』
株式会社リゾームが公開する社内メールマガジンの記録は、本田の言葉を井深大著『わが友本田宗一郎』(文春文庫)からの引用として紹介しています。そこでは、他人から聞くだけではなく、自分自身で試すことを大切にし、その分だけ失敗も増えるという流れが示されています。
文藝春秋の公式書誌によると、井深大『わが友 本田宗一郎』文春文庫は1995年3月10日の刊行です。CiNii Booksの目次情報には、第四章「見たり、聞いたり、試したり」が記録されています。
ただし、今回直接照合したのは第三者による書籍からの抜粋と、出版社・図書館の書誌情報です。文春文庫の該当ページを直接読んで本田の発言を一字一句確認したわけではありません。出典となる著作の場所は絞れていますが、話した日時と逐語表記はまだ要検証です。
「見る」「聞く」だけでは分からないこと
説明を聞いて仕組みを理解することと、自分で実際に作ったり試したりすることには違いがあります。例えば機械の設計図を読んだだけでは、実際の部品のばらつきや製造工程の問題を把握しきれないことがあります。
本田の言葉は、知識の吸収を否定するのではなく、知った内容を現実の中で確かめる姿勢を重視したものとして読めます。見たり聞いたりした内容が間違っていれば、試す前に検討することも必要です。
失敗が増えるのは、行動したからかもしれない
何も試さなければ、少なくとも実験で失敗する機会は減ります。しかし新しい試みがなければ、予測していなかった改善や発見も得られません。失敗という結果そのものが価値なのではなく、未知の問題に触れる機会があったことに意味があります。
ただし、危険な機械や医療、交通安全などで、必要な安全対策を省いて挑戦することは認められません。失敗の影響が大きい領域では、試験方法や停止条件を整え、他者の安全を守る必要があります。
本田が関わったものづくりの現実
Hondaの公式75年史は、1970年代に低公害CVCCエンジンを開発し、厳しい排出ガス基準へ対応した経緯を紹介しています。技術者は燃焼や製造上の課題を研究し、試作と実験を繰り返しました。
同サイトには、「成功は99%の失敗に支えられた1%」を扱う記事もあります。そちらは1973年の本田の談話と、失敗の同じ原因を繰り返さないという指摘に焦点を置いています。この記事は、そもそもなぜ「自分で試すこと」に価値があるかを考えます。
現代の仕事で「試す」を安全に取り入れる
例えば新しい企画なら、いきなり全顧客に新しい仕組みを適用するのではなく、目的を定めた小さな実験を行う方法があります。成果の判断基準と中止する条件を先に決め、結果が期待と違ったら学びを整理する。これは本サイトの応用であり、本田が今日の企業向けの実験設計手法を説明したという意味ではありません。
失敗を責めないことと、失敗を検証しないことは別
失敗があり得る挑戦を許容する文化は大切ですが、同じ不具合が繰り返されても見過ごすこととは違います。失敗が起きたときは、誰の責任かを決めるだけではなく、何が原因で、どうすれば再発を減らせるかを確かめる必要があります。
まとめ:知っているだけで終わらせず、条件を整えて試す
「失敗を厭うから成功のチャンスも少ない」は、井深大『わが友本田宗一郎』に由来すると紹介される言葉です。書籍そのものの逐語校合は残りますが、第四章「見たり、聞いたり、試したり」という章題は正式な書誌で確認できます。失敗を推奨するよりも、学んだことを現実の中で安全に確かめ、次の工夫につなぐという意義を見出せます。

出典・関連記事
・文藝春秋『わが友 本田宗一郎』公式書誌:1995年の文庫版情報。
・CiNii Books『わが友本田宗一郎』:第四章「見たり、聞いたり、試したり」を含む目次。
・株式会社リゾーム・メールマガジン第110号:井深大の書籍からの引用として掲載した二次資料。逐語原典ではありません。
・Honda「75年史」:CVCC開発の史実。
・関連:成功は99%の失敗に支えられた1%。