明石家さんま名義「笑顔になるから楽しいことが起こる」|出典と心理学の限界

はじめに|「笑顔になるから、楽しい出来事が起こる」は本人の発言か

「笑顔になるから、楽しい出来事が起こるようになる」。この一文は明石家さんま名義で、さまざまな名言サイトや紹介記事に掲載されています。ただし、さんま本人がどの番組や取材で、いつ、どのような質問を受けて語った言葉なのかは特定できていません。引用が流通していることと、発言の原典が確認できたことは分けて考える必要があります。

また、笑顔が感情に影響し得るという心理学の研究はありますが、そこから「笑顔でいれば外から楽しい出来事がやってくる」という因果関係を科学的な法則として導くことはできません。言葉の帰属と、科学的な説明の範囲をそれぞれ確認します。

2017年頃には日本語の名言一覧で流通していた

日本語ブログ「明石家さんまの名言」などには、対象の言葉が本人名義で掲載されています。また、2019年9月の名言紹介記事にも、同じ趣旨の一文が並んでいます。これらは言葉が日本語で引用されてきたことを示す資料です。

ただし、こうした一覧にはテレビ番組の放送日時、発言した場面の映像、取材原稿、著書の該当ページが示されていません。複数のまとめサイトが同じ文を使っていても、発言者本人を独立に検証できた証拠が増えたわけではありません。

現段階の判定は「明石家さんま名義での流通を確認/本人の逐語発言・初出の記録は未確認」です。本人が自然に語りそうな雰囲気であることを、原典確認の代わりにはしません。

本人の番組発言に確認できる別の「今を楽しむ」考え

マイナビニュースの2016年11月27日の番組報道では、さんまがテレビ番組で、今この日が自分の笑いのベストだという考えを語ったことが紹介されています。これは番組の日時と発言内容が分かる別の記録であり、対象の名言と同じ文章ではありません。

また、2018年のラジオの会話を採録した個人ブログでは、嫌なことやつらいことに出会っても、そこから楽しさを見つけようとする本人の発言が紹介されています。もっとも、こちらは第三者による採録であり、当該放送音声そのものとの照合はしていません。

こうした資料から、さんまが楽しさや笑いを重視してきた様子はうかがえます。しかし、似た考えを別の発言で確認できたことは、名言サイトの一文の真正性を直接証明しません。確認できる本人の発言と、出典不明の流通文を混ぜないことが大切です。

笑顔と感情の関係は研究されている

2022年に『Nature Human Behaviour』に掲載された国際共同研究「A multi-lab test of the facial feedback hypothesis」は、19か国・3,878人のデータを使い、表情が主観的な幸福感に影響し得る条件を検討しました。顔の表情をまねる課題や、自発的に笑顔の筋肉を動かす課題で、幸福感が変化することを示す結果が報告されています。

研究の概要は米国国立医学図書館PubMedの抄録と掲載誌の論文ページで確認できます。一方、ペンを口にくわえて表情を変える別の条件では、結果は一貫していませんでした。どの方法でも、誰でも、確実に同じ効果が得られると説明する研究ではありません。

そして研究が測ったのは主として本人の感じる幸福感であり、幸運な出来事や人間関係の好転が必ず生じるという予測ではありません。感情の変化と、外部世界で何が起きるかは違う研究課題です。この論文を「笑えば楽しい出来事を引き寄せる」説の証明として使わないようにします。

笑顔を作れない人に責任を負わせない

笑いたくないほど疲れているとき、悲しい出来事があったとき、笑顔を作る余裕がないこともあります。そんな人へ「あなたが笑わないから楽しいことが起きない」と言うのは、科学的な裏づけがなく、困難を抱える本人への不当な責任の押し付けにもつながります。

人によっては、無理に笑うよりも、休む、信頼できる人に話す、負担の原因を調整することが必要な場合があります。笑顔を一つの選択肢として考えることと、笑顔をすべての人に強制することは別です。

日常の応用としては、楽しいときにその気持ちを大切にする、気分がよい日は周囲へ穏やかに接する、といった考え方ができます。これは当サイトの提案であって、今回の名言の逐語的な原意でも、医学的な治療法でもありません。

まとめ|名言の帰属と、実験で測れた効果を混同しない

「笑顔になるから、楽しい出来事が起こる」という一文は、明石家さんま名義で日本語に流通しています。しかし本人が実際にその文章を語った一次記録は未特定です。

一方、心理学研究では、表情が本人の主観的な幸福感に影響する条件が調べられています。しかし、その知見が外部の楽しい出来事を保証するわけではないと明確に区別すべきです。言葉の魅力を考えるために、出典と科学的根拠を過大に語る必要はありません。

資料と限界:日本語の引用流通例、別の本人発言を報じた2016年の記事、Colesほか(2022)心理学共同研究。名言の本人初出、心理学実験から日常への一般化、個々人への効果は未確認です。出典ステータスの読み方も参照してください。

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