浅田次郎「おもしろくないことはやらなくていい」の出典|本人取材で読む仕事の選び方

浅田次郎「おもしろくないことはやらなくていい」の出典

「おもしろくないことはやらなくていい。そんなものは人生でマイナスでしかない」。作家・浅田次郎の言葉として紹介される一文です。好きなことを選ぶ自由を感じさせる一方で、面倒なことは全て投げ出してよいのかという疑問も生まれます。

今回の調査でも、この二文が浅田本人のどの著書やインタビューに同じ形で載ったかは特定できませんでした。名言紹介サイトに繰り返し登場していても、発言の日時や掲載箇所を確かめる資料とは限りません。冒頭の定型句は引き続き要検証として扱います。

一方、本人の考えに近い資料として、2008年の『PRESIDENT』掲載文と、2021年のForbes JAPANの取材記事があります。確認できる本人の言葉と、原典未確認の短句を分けて読むことで、表面的な「嫌ならやめろ」以上の意味が見えてきます。

2008年『PRESIDENT』にある生き方の説明

PRESIDENT Online「浅田次郎―私の最期はこう弔ってほしい」(2008年12月1日掲載、原誌2008年7月16日号)では、浅田が自身の生き方について語った一人称の文章が公開されています。日付と媒体、本人の語りが分かる関連資料です。

この文章には、やりたいことをやり、やりたくないことはやらないという本人の性格を表した一節があります。冒頭の「おもしろくないことはやらなくていい」とは言い回しが違いますが、本人が自分の意思を大切にしていたことを確かめる手掛かりにはなります。

ただし、この取材文は編集・構成を経た掲載記事です。そこで語られた考えが、名言サイトの定型句にどのような経路で変わったのかは分かりません。似ている内容があることを、同じ文言の原典発見と呼ばないようにします。

2021年の取材で語った「好きな仕事」と「選んだ仕事」

Forbes JAPAN「傷つくことは当たり前──浅田次郎流 人生を前に進める方法」(2021年2月2日)は、上阪徹氏による本人取材をもとにしています。浅田は小説を書くことが好きで、長年続けられたと説明しています。結果としての成功以上に、書く過程を面白がってきた経験が紹介されています。

注目したいのは、浅田が「必ずしも好きなことを仕事にできない」という現実も認めている点です。好きになれそうな仕事を選び、自分からその仕事を好きになってみるという考え方を語っています。好きなことしかやらないという単純な二者択一ではありません。

また、本人は若いころの仕事や経験を、苦労だけで説明されることにも違和感を示しています。楽しんで取り組んだ活動が、後から努力の美談として語られることもあるという話です。本人の経験を、根性を強要する教訓へ作り変えないことが大切です。

やりたくないことを断る自由と、引き受けた責任

自分の関心に合わないことを無理に続ける必要がない場合もあります。しかし、日常の仕事や家族との生活には、自分が望まない役割を引き受けなければならない場面もあります。好きなことを選ぶ自由と、他者との約束への責任は両立して考える必要があります。

2008年の『PRESIDENT』の文章では、浅田は親との関係に複雑な思いを抱きながらも、老いた親の世話をする義務について述べています。本人の生き方には、望まないことを一切しないという単純なルールでは説明できない面もあります。

もちろん、家族の世話や仕事を無制限に背負うべきだという意味ではありません。負担が大きければ助けを求めたり、役割を調整したりする選択肢もあります。責任を果たすことと、自分を犠牲にし続けることを同じものにしないようにしたいものです。

面白さは、最初から分かるとは限らない

仕事を始める前は、どの部分に面白さがあるのか分からないことがあります。最初は単純な作業に思えても、知識が増えると以前とは違う景色が見えてくるかもしれません。やる前の印象だけで、向いているかどうかを決めつけないという考え方です。

たとえば、文章を書くのが得意ではなかった人が、読む相手に伝わる構成を考えるうちに、推敲を面白いと感じる場合があります。反対に、憧れていた仕事が、実際には自分の大切にしたい生活と合わないこともあるでしょう。体験によって興味が変わる余地を残すことが重要です。

浅田自身が2021年の取材で語った仕事との向き合い方は、当サイトの「向き不向きなんて考えないほうがいい」の記事でも紹介しています。本記事は出典不明の「面白くないことはやらなくていい」という句の注意点を扱い、関連記事とは検証対象を分けています。

「楽しいから続く」は、つらくても続けろと違う

何かを好きで続ける人でも、うまくできない時期はあります。しかし、長く続けることが必ずよい選択になるとは限りません。健康を損ねたり、不公平な扱いを受けたりするなら、環境を変える必要もあるでしょう。好きな活動だからこそ、続けられる条件を整えることが大切です。

一方、嫌なことが一つあっただけで、今の活動のすべてが無意味になるわけでもありません。何が負担になっているのか、学び方や役割を変えられないかを考えると、別の道が見える場合もあります。活動への関心と、いまの環境の問題を切り分けるという方法です。

浅田の2021年の取材には、仕事を好きになろうとする意識が人生の過ごし方に影響するという趣旨があります。とはいえ、それは不適切な職場環境を我慢する義務ではありません。気持ちを工夫することだけで解決できない問題があることも忘れないようにします。

自分の選択を考えるための小さな実践

今の活動が面白くないと感じたら、まず何がつらいのかを確かめる方法があります。作業そのものなのか、誰かとの関係なのか、時間の不足なのか。原因によって、適切な対応は変わるからです。

次に、改善できる部分があるかを考えます。必要な知識を学ぶ、相談相手を増やす、作業の進め方を変えるなどの方法があるかもしれません。やめるか続けるかを決める前に、条件を変える選択肢も検討できます。

それでも自分の生活や価値観と合わないなら、離れることも選択肢になります。ただし、生活の条件によって決断の速度は異なります。自分の事情を無視して、名言に合わせて人生を決めないことが重要です。

まとめ――本人の考えと流通名言の違い

「おもしろくないことはやらなくていい」という浅田次郎名義の短句は、今回も本人の著書やインタビューで逐語一致する掲載箇所を特定できませんでした。出典タグ117「要検証」を維持します。

一方、2008年の『PRESIDENT』では自分の意思を大切にする生き方、2021年のForbes JAPANでは好きなことを続ける喜びと、選んだ仕事を好きになってみる考え方が確認できます。似た内容でも、それぞれ異なる文脈で語られた本人の説明です。

本記事の解説は、読者が取材記事まで遡れるよう資料を明示して作成しました。名言の文言を強めたり、苦手な仕事をすぐ辞めるよう勧めたりする意図はありません。何を選び、何を変え、どんな責任を引き受けるかを自分で考えるための手掛かりとしたいものです。

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