「目標があるのは幸せ」という言葉を、どこまで確認できるか
「目標があるっていうのは、幸せなことですよね」。B’zのボーカリスト、稲葉浩志の言葉として、こんな一節が広まっています。続けて、目指す場所へ一心に進む姿の美しさを語る長い文章も流通しています。ただし、広く知られていることと、本人がその一文を実際に語ったと確認できることは別です。
現時点で、長い流通文の発言日時、インタビュー名、収録作品、原文の掲載箇所は特定できませんでした。名言紹介サイトに同じ文章が並んでいても、それだけで本人の逐語発言とは判断できません。
一方、稲葉本人が「目標を持てること」を幸福と結びつけて語った、確認可能なインタビューがあります。この記事では、確認できた本人の言葉と、初出未確認の流通表現を切り分け、その先にある考え方を読み解きます。
2016年の『羽』インタビューで、本人は何を語ったのか
2016年1月12日公開の音楽ナタリー「稲葉浩志『羽』インタビュー」では、ソロ活動や作品づくりについて本人が質問に答えています。過去のキャリアを振り返り、達成感があるのではないかと尋ねられた場面で、稲葉は、取り組むほど次に試したいことが生まれ、それを自分で実行することが目標になるという趣旨を語っています。
その流れで述べたのが、「それがあるのは幸せなことだと思います」という言葉です。ここでの「それ」は、他人に設定された数字をただ追いかけることではなく、自分でやってみたいことが見つかる状態を指していると読めます。
同じインタビューでは、長く音楽を続けるうちに自分たちの「型」ができること、その型の外へ踏み出そうとする姿勢も話題になっています。成功したあとも、新しい試みを見つけて実行する。この具体的な文脈が分かると、目標を持つ幸福という話が、単なる根性論ではなくなります。
流通する長い名言と、確認済み発言は同じではない
名言紹介サイトなどには、目標や行きたい場所に向けて脇目もふらず進む姿が「一番美しい」という趣旨の言葉が、稲葉の発言として掲載されています。しかし、今回確認した音楽ナタリーの掲載文には、その長文と一致する一連の発言はありません。
二つの文章は「目標を持つことの価値」という大きな主題を共有していますが、主題が似ていることは、同じ発言である証拠にはなりません。別の取材で実際に語られた可能性も、後に編集・要約された可能性も残ります。現状では、そのどれかに決める資料がありません。
だからこそ、長い流通形は本人の確定した引用として扱わず、出典確認待ちの表現として紹介します。元の映像・音声・雑誌・公式記事などが判明すれば、語句と前後関係を改めて照合する必要があります。
「もっと上へ行く」だけが目標ではない
目標というと、売上や順位、資格、記録のように、誰かと比較しやすいものを思い浮かべがちです。ところが音楽ナタリーの取材では、稲葉は、時代によって「上に行く」という感覚自体が変わるのではないかとも考えています。
この発言を読むと、目標は外から決められた階段を登ることだけではないと感じられます。今の自分が試したい表現を見つけること、すでにできる仕事のやり方を変えてみることも、目標になり得ます。
たとえば仕事で、肩書を上げることより、まだ解決できていない顧客の問題に取り組みたいと思う場合もあるでしょう。これは稲葉本人が挙げた仕事の事例ではなく、インタビューの考え方を日常へ引き寄せた本稿の解釈です。数字に置き換えにくい目標にも、本人にとっての意味はあります。
夢中になることと、自分を追い詰めることを混同しない
流通する名言の「脇目もふらず」という表現は、ひたむきさを称える言葉として読めます。しかし、元の発言場面が確定していない以上、その一語から稲葉の人生観全体を説明することはできません。
仮に何かに全力で取り組むことを価値として受け取るとしても、いつも無理をしなければならないという結論にはなりません。目標のために方法を変えること、休むこと、今の目標が自分に合っているか問い直すことも、長い時間をかけて取り組むうえでは必要です。
本人の確認できた言葉が教えてくれるのは、達成の瞬間だけでなく、次にやってみたいことが自分の中に生まれる状態の豊かさではないでしょうか。努力の量ではなく、何を試そうとしているかに目を向けたいところです。
日々の暮らしで「次にやってみたい」を見つける
大きな夢が見つからないとき、無理に壮大な目標を設定する必要はありません。最近「こうしたらどうなるだろう」と思った小さな疑問を、一つ試してみるところから始められます。読んだ本について誰かと話す、いつもと違う順序で仕事をする、気になっていた場所へ足を運ぶ。小さな試行も立派な目標です。
試した結果が思い通りでなかったなら、「才能がない」と結論づける前に、何が分かったかを確かめてみる。試すことが次の問いを生み、次の問いが新しい目標になるという循環もあります。
一方、目標のない時期があることを失敗扱いしないことも大切です。休息や迷いの時間を通じて、自分が本当に取り組みたいことが見えてくる場合もあります。これは本人の発言そのものではなく、この記事から読者へ提案する考え方です。

まとめ|確認できる言葉から、目標の意味を考える
稲葉浩志は2016年の音楽ナタリーのインタビューで、続けているからこそ次に実行したいことが生まれ、それを目標にできることを幸福と結びつけて語っています。自分の中に新しい「やってみたい」が生まれることが、その会話の中心です。
他方、「目標や行きたい場所に向かって脇目もふらず進む姿」を称える長い流通表現については、発言の原典を特定できていません。似た内容の一次性の高い資料が存在しても、長文全体が逐語的な本人発言だと認定することはできません。
出典状態:要検証(流通する長文の初出・原文)。参考資料として、音楽ナタリー「稲葉浩志『羽』インタビュー」(2016年1月12日)を掲載します。これは目標についての本人発言を確認できる資料であり、未確認の長文名言そのものの出典ではありません。判定の読み方は出典ステータスの読み方を参照してください。