江崎玲於奈「有限な人間と永遠の知識」|科学が求める確かさと未知の世界

はじめに

「人間は死を免れることができない有限な存在である。それだけに、永遠なるものや確実に信じられる知識を求める」。江崎玲於奈の言葉として紹介されるこの文章には、限りある人生を生きる人が、なぜ自分の寿命を超える知識を探し続けるのかという問いがある。

江崎は半導体中のトンネル現象の研究で1973年にノーベル物理学賞を受けた科学者だ。しかし、この一節を物理法則の説明や、死についての科学的結論と取り違えるべきではない。人の存在と知識をめぐる思想的な言葉と、実験で確かめられた研究成果は別の種類の記述である。

また「絶対的なもの」を求める気持ちと、科学が絶対に間違えない知識を保証することは違う。今回は名言の出典状態を確かめ、本人の公式講演や研究史に現れる科学のあり方と対比しながら読み解く。

名言の流通と、原典の未確認部分

長い日本語の文章は、江崎玲於奈の名言集として複数のウェブサイトに掲載されている。「有限な存在」「確実に信じられる知識」「ロマン」といった語を含む流通形は確認できるが、発言の年月日、著作の版とページ、前後の文章は今回の調査で特定できなかった。

江崎本人の1973年ノーベル賞講演「Long Journey into Tunnelling」や、同年の晩餐会での英語スピーチはノーベル賞の公式サイトで公開されている。しかし今回扱う日本語の長文がその講演にあることは確認できない。公式資料の存在を、別の未確認引用の原典証明に使わないため、出典状態は「要検証」とする。

この名言を読む際は、本人がそのように語ったとされる文章を思想的な問いとして扱い、そこから生まれる考察を編集上の読みとして示す。出典を確定していない部分を、もっともらしい講演場所や研究上の逸話で埋めないことが大切だ。

江崎が切り開いた「見えない現象」の研究

筑波大学が公開する江崎の業績紹介によれば、1950年代後半、高濃度の不純物を加えた半導体の接合部で、電圧を増すと電流が減るという負性抵抗が見いだされた。江崎らはこの現象を量子力学的なトンネル効果として説明し、実験で確かめた。

古典的な直感では通過できないはずの障壁を、電子が量子力学に従って通り抜ける現象は、当時の半導体研究に新しい視点を与えた。直感に合わない結果を、観測と理論の両方から考えることが、ここでの科学の進め方だった。

江崎はその後、半導体超格子の研究にも取り組み、自然にある材料をそのまま利用するだけでなく、人工的な周期構造を組み込む考えを発展させた。確かな知識を求める過程では、未知のものへ踏み込む創造性も必要だという研究史上の具体例として読める。

科学の「確かさ」はどう作られるのか

1973年のノーベル賞晩餐会で、江崎は英語のスピーチを行い、物理学の前進には各地の研究室で新しい考えを試験し、事実を確かめる共同の営みがあると述べた。一人の才能だけで完成した永遠不変の答えではなく、多くの研究者が検証する知識を大切にしている。

そのため「確実に信じられる知識を求める」という流通文を、科学が将来一切修正されない答えへ到達するという主張に置き換えるのは適切ではない。新しい観測や説明が見つかれば、理論はより精密になることがある。確かさを求めるからこそ、疑い、検証し、修正するという側面がある。

放送ライブラリーには、江崎が出演した1986年の放送大学特別講義『科学がわれわれに与えるもの』が記録されている。その概要では、科学技術は道具であり、活用を決めるのは人間であると説明されている。科学が新しい知識を生むことと、それを何のために使うかは区別されるのだ。

限りある人生だからこそ問いが生まれる

有限であると知ることは、必ずしも悲観につながらない。何でも知ることができないからこそ、今どの問いへ時間を使うかを選ぶことにもなる。自分の一生で答えが出なくても、後の人が考え続けられる問いがある。

一方、永遠の真理を求めるという言葉を、特定の思想や宗教の正しさを決める証明として使うことはできない。人生の意味は一つの研究結果から自動的に決まるわけではない。科学が扱う説明の範囲と、個人が大切にする価値の問題は、互いに関係しても同じではない。

また、限りある命の話を読む人が、必ず希望や使命感を持つとも限らない。不安を感じることも自然である。命や死をめぐる考え方を誰かへ強制せず、問い続ける余地を残すことが、この言葉を慎重に読む方法だ。

まとめ・出典と読者への問い

江崎玲於奈の「有限な人間が永遠の知識を求める」という一節は名言として流通しているが、本人の著作や講演の逐語原典までは確認できなかった。したがって出典状態は「要検証」とする。

一方、江崎による半導体中のトンネル現象の研究と、公式に残る講演・演説は確かな資料がある。そこには、未知の現象を実験によって確かめ、科学の進歩を多くの人の営みとして捉える姿勢が見える。人が絶対的な知識を求めるという問いと、知識の検証方法を区別することが、この記事の中心となる。

引用の流通形:江崎玲於奈の名言紹介/マルチョン名言集・江崎玲於奈。本人の業績・公式資料:筑波大学・江崎玲於奈の業績/ノーベル賞公式・1973年記念講演/ノーベル賞公式・晩餐会スピーチ/放送ライブラリー・1986年放送大学講義の記録。関連記事:「全体から物事を考える」と研究の姿勢。出典状態の説明。

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