太田雄貴「勝てない中で練習を続ける」|北京五輪までの停滞と戦術の立て直し

はじめに

「勝てない中で練習を続ける時というのは、本当にしんどいです」。太田雄貴の言葉として伝わる一節は、結果が出ない時間の苦しさに目を向ける。だが、練習を続けさえすれば誰でもメダルを取れる、という成功の保証ではない。

太田は2008年北京五輪で日本のフェンシング史上初の銀メダルを獲得し、2012年ロンドンでは団体銀、2015年世界選手権では個人金を手にした。それぞれの結果には、勝てなかった期間の試行錯誤もあった。結果よりも前の時間を具体的に知ることが、名言を読む手がかりになる。

元記事では努力一般の価値を繰り返す説明が中心だった。今回は、流通する引用の出典確認を進めながら、試合結果の記録、コーチとの関係、戦術の変更という本人の経験を読み解く。

言葉の掲載先と、まだ確かめられない初出

長い引用は『LIVE THE WAY』の太田雄貴名言集などに掲載されている。「優勝者は一大会で一人」という前置きの後に、勝てない時期に練習する難しさと、五輪でメダルを取れた経験が語られる形だ。この文章が太田の言葉として流通している事実は確認できる。

しかし、その名言集には発言の年月日・インタビュアー・書籍のページが示されていない。今回の調査でも同一の長文を本人が実際に話した一次の収録記録は特定できなかった。似た内容の本人取材があることと、旧記事の全文が本人の逐語であることは別だ。

一方、JOCは2009年1月に北京五輪までの本人インタビューを3回に分けて公開し、勝てなかった時期と練習の転機を記録している。競技史は一次取材で補強できるが、長い格言の初出は「要検証」として区別する。

北京五輪前には自信を失った時期もあった

JOCの取材によれば、太田は2007年の世界選手権でベスト16に終わり、その後の大会でも思うような手応えを得られない時期があった。国内大会で勝っても、以前ほど自信がわかなかったという。勝敗だけでは分からない、技術と感覚のずれを本人が感じていた。

2008年に入り、欧州の大会でベスト16やベスト8という結果を重ねたが、思い描く状態とは違った。本人は、大きな舞台へ向かう時期に不安が強まったことを語っている。努力している本人にも、先が見えない時間があるという具体的な証言だ。

それでも北京五輪で銀メダルを獲得した。ただし、過去の苦しさが必ず報われたと一般化することはできない。勝つ人の過去には苦労があっても、苦労する人が皆勝つわけではないという現実も忘れないようにしたい。

指導を受けることも努力の一部

2009年のJOC本人インタビューには、太田が自分の思いどおりに勝てなかった後、オレグ・マツェイチュクコーチへ教えを求めた経緯が紹介されている。自分の努力が足りないと責め続けるのではなく、助けを求めて方法を変えた。

2006年のアジア大会前には、相手選手の動きを研究した短期間のレッスンが有効だったという。練習時間だけを増やしたのではなく、誰と戦うか、どう得点するかを具体的に考えた。努力の量と、努力を向ける先を分けて点検する姿勢が見える。

後年、別の選手と対談した『GO Journal』でも太田は、強くなるために戦い方を作り替える期間は一時的に勝てなくなることがあると語っている。一見悪くなった結果が、方法を学び直している途中の可能性もあるという説明だ。

続けるか、やり方を変えるか

練習に成果が出ないとき、ただ同じ動作を続ければ問題が解決するわけではない。原因が技術にあるなら技術を、準備にあるなら準備を、必要に応じて見直す必要がある。変えてよいのは方法であって、必ずしも目標を捨てる必要はない。

一方、競技に取り組む環境や体調が大きく崩れているなら、練習を止めたり専門家に相談したりする方がよいこともある。けがや過労まで「続けるために耐えろ」と解釈しないことは重要だ。太田の経験を根性論へ変えるべきではない。

仕事や学習に応用するなら、結果だけでなく、試した方法と実際の変化を振り返ることができる。別の人の意見を聞き、必要な道具を変えることも選択肢になる。挑戦を続けることと、同じ失敗を繰り返すことは違う。

まとめ・出典と実績の確認

太田雄貴には、五輪銀メダルの前に自信を失った時期や、コーチの助けを得て取り組みを変えた経験があった。これは2009年のJOC本人取材で確認できる。「勝てない時期の練習」を具体的に考えるなら、その行動と判断へ目を向けたい。

ただし、旧記事の「優勝者は一人」という長い文章の原文出典は特定できず、タグは「要検証」とした。なお団体競技では複数の選手が優勝者になるため、その前置きは一般的なスポーツの法則ではない。引用の修辞と競技の実態を区別することも必要だ。

引用の流通例:LIVE THE WAY「太田雄貴の名言30選」。本人取材:JOC・太田雄貴の競技歴(1)/同(2)・コーチとの関係/同(3)・北京までの苦戦/GO Journal・フェンシングの戦術を語る対談。大会成績:JOC・五輪公式記録。関連記事:「疑うな」の2011年の発言/2015年世界選手権金メダル。出典判定ガイド。

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