はじめに――『宝島』はどんな結末を迎えるのか
『宝島』は、少年ジム・ホーキンズが偶然見つけた宝の地図を手に、海賊たちと危険な航海へ出る冒険小説です。片脚の男ロング・ジョン・シルバーや海賊船ヒスパニオラ号が有名ですが、原作の結末では宝を見つけても、恐怖や裏切りの記憶が消えるわけではありません。
作者は英国の小説家ロバート・ルイス・スティーヴンソン。雑誌での連載を経て1883年に単行本として刊行されました。Project Gutenbergの原文は34章、全6部で構成されています。少年が語り手となる場面と、医師リヴジーが語りを引き継ぐ場面があるのも特徴です。
ここでは英語原文から地図の発見、船内の反乱、島の探索、宝が見つからなかった理由、シルバーの最後を追います。結末まで紹介するため、先に読んで驚きを味わいたい場合は注意してください。
冒頭――ジムはなぜ宝の地図を手に入れたか
ジムは両親が営む宿屋アドミラル・ベンボーで暮らしています。そこへ船乗りのビリー・ボーンズが現れ、宿に長く滞在するようになります。彼は過去の仲間を恐れ、酒を飲みながら周囲を警戒しています。地図をめぐる冒険は、少年が知らない大人の犯罪や秘密と接触することから始まります。
船乗りの死後、ジムと母親は彼の持ち物を調べ、金銭とともに書類を見つけます。その書類には海賊フリントが隠した財宝の場所が示されていました。ジムは地図を医師リヴジーと地主トレローニーへ持っていきます。一枚の地図が、単なる遺品から大人たちを動かす計画へ変わるのです。
彼らは船ヒスパニオラ号を用意して島へ向かうことにします。船長スモレットは乗組員の選び方や計画の扱いに疑問を持ちますが、航海は始まります。最初から危険に気づいた人物がいても、その懸念が十分に共有されなければ問題は進むという伏線が置かれています。
ロング・ジョン・シルバー――親切な料理人の正体
ジムが信頼していた船の料理人シルバーは、気さくで頼りになる人物に見えます。片脚であることと、海賊としての有能さは別です。彼は船員たちの間で強い影響力を持ち、表向きは船長たちに協力しています。見た目や愛想だけでは味方か敵か判断できないと少年は知ります。
航海中、ジムはリンゴ樽の中で偶然、シルバーたちが反乱を企てる会話を聞きます。財宝を手に入れた後、依頼主側の人々を排除しようとしていたのです。物語の緊張は、船の外の嵐より、同じ船に乗る人間同士の不信から生まれます。
ジムが情報を伝えたことで、医師と船長らは対策を考えます。しかし、シルバーは単純な悪役ではありません。状況を読み、敵味方の間を巧みに動き、時にはジムを守るような行動も取ります。一人の人物に勇気や機転と裏切りが同居する複雑さが、この作品を面白くしています。
島の冒険――ベン・ガンと船をめぐる戦い
島に上陸したジムは、長く島で一人暮らしをしていたベン・ガンに出会います。彼はかつて海賊の仲間でしたが、現在は島から脱出したがっています。宝の持ち主の情報を知る者が、必ずしも地図を持っている側にいるわけではありません。
医師と船長たちは木造の砦で身を守り、海賊たちとの戦いに巻き込まれます。途中では医師の視点から出来事が語られ、ジム自身も小舟を使ってヒスパニオラ号へ向かう危険な決断をします。少年の機転は状況を変えますが、勝手な行動が仲間に心配をかけることも描かれています。
ジムは船上でイスラエル・ハンズと対決し、船を制御するための知識と度胸を試されます。危機を切り抜けたとしても、すべてが簡単に片付くわけではなく、シルバーの勢力はなお残っています。冒険の成功は一回の勇敢な行動だけで決まるものではありません。
宝が見つからない理由――地図の最後に待っていたもの
シルバーたちは地図を頼りに財宝の場所へ進みます。しかし、目指した場所にあるはずの金銀はすでに姿を消していました。地図が偽物だったのではなく、示された場所から財宝が移されていたことが、最後の大きな逆転です。
財宝を動かしたのはベン・ガンです。島で過ごしていた間に隠し場所を発見し、別の洞窟へ運んでいたのでした。医師はその事情を知り、反乱者たちに地図を渡しても大きな損失にならない状況を利用します。同じ情報を持っていても、その情報がいつの状態を示すかで価値が変わるのです。
ジムたちの側は洞窟にある財宝を運び、帰国の準備を進めます。そこには大きな危険を冒した末の達成感がある一方、多くの死傷者を出した現実もあります。宝を見つけたという結果だけでは、航海の代償を説明しきれません。
結末――シルバーは死ぬのか、それとも逃げるのか
原作の最後に、ジムたちの一行は無事に帰国の航海へ向かいます。シルバーも一時は船に同行しますが、寄港地で小舟に乗って姿を消します。その際、金貨の入った袋を一つ持ち去ったことが分かります。シルバーは最後に逮捕される場面や処刑される場面を迎えるのではなく、逃亡します。
ジムは分け前を得て故郷へ戻るものの、島で経験したことは忘れられません。物語の結末では、夜に島の音を思い出すような恐怖が語られ、再び宝を求めて船出する気持ちはないと示されます。財宝を手にしても、冒険の記憶には代償が残るという余韻です。
つまり『宝島』は、海賊を倒してすっきり終わる話でも、財宝を独り占めして幸せになる話でもありません。シルバーのずる賢さは最後まで消えず、ジムは金銭以外のものも持ち帰ります。人を信じる難しさと、危険から学んだ経験が結末に重なっています。
現代に読む価値と原典
この作品では、地図を持っていることが必ずしも目的地への道を保証しません。シルバーは信頼できそうに見えて裏切り、ベン・ガンは孤独な人物に見えて決定的な情報を持ちます。人の第一印象や、一つの資料だけで状況を決めつけないという読み方ができます。
また、ジムの勇気には仲間の助けが欠かせません。作品は個人の大胆さを描きながら、医師、船長、ベン・ガンらが持つ知識や判断を組み合わせています。冒険は一人の天才がすべて解決する話ではなく、分担された働きの積み重ねなのです。
原典:Robert Louis Stevenson, Treasure Island(1883年単行本、英語原文全34章/Project Gutenberg #120)。書誌:Project Gutenberg作品記録。作者は1894年没で、原作は日本での通常の著作権保護期間を満了しています。現代の日本語訳・映画脚本・挿絵は利用せず独自に要約しました。