はじめに――レディー・ガガは本当に「諦めないこと」が大切だと語ったのか
「勝つことではなく、諦めないこと」。レディー・ガガのこの言葉は、2019年のアカデミー賞授賞式で実際に語られたものです。結果を手にした直後に、結果だけでは測れない努力の意味を語った点が印象に残ります。
授賞式の発言を切り取ると、誰でも諦めなければ夢がかなうという励ましに見えるかもしれません。しかし本人は、拒絶された回数や倒れた回数ではなく、その後の行動に目を向けるよう呼びかけました。成功の保証ではなく、挫折をどう受け止めるかという姿勢を語っています。
今回は映画芸術科学アカデミーの受賞記録、公式放送局ABCの同時代の記事、音楽賞主催団体GRAMMYの報道を確かめます。映画の歌詞と受賞スピーチ、本人の発言と編集上の解釈を混同しないことを重視します。
2019年2月24日――『Shallow』でアカデミー賞を受賞
第91回アカデミー賞でガガが受賞したのは、映画『アリー/スター誕生』の「Shallow」による歌曲賞です。アカデミー公式の受賞記録は、マーク・ロンソンら共同制作者と並んでガガの名前を記載しています。この発言は主演女優賞ではなく歌曲賞の受賞スピーチに含まれます。
舞台では家族や共同制作者、共演したブラッドリー・クーパーへの感謝を述べました。映画『アリー/スター誕生』の劇中で登場人物が歌うことと、ガガ本人が受賞者として語ることは別の出来事です。劇中人物の台詞や歌詞として帰属させないことが重要です。
放送局ABCの授賞式記事は、彼女が長く努力してきたことを述べたうえで、勝利そのものより諦めないことに重きを置いたと伝えています。発言の場・受賞部門・主旨がそれぞれ確認できるため、出典不明のネット名言として扱う必要はありません。
「It’s not about winning」が意味するもの
核心となる短い原文は「It’s not about winning.」に続く、諦めないことを重視する一節です。ここでは「大切なのは勝つことそのものではなく、諦めずに向き合うこと」と解釈します。受賞した事実を否定する言葉ではなく、受賞までの過程に価値を見いだす言葉です。
受賞スピーチで彼女は、夢があるならそのために闘うよう呼びかけています。「闘う」という比喩は競争相手に勝つ意味だけではありません。拒絶された後も工夫し、仕事を続ける自分自身の意志にも目を向けていると読めます。
ただし、努力の結果がすべて本人の意思で決まるわけではありません。機会、協力者、資源、運なども関わります。この言葉を「諦めた人が悪い」という他人への非難に使わないことが、励ましの言葉として受け取る際の大事な線引きです。
夢を追うことと、方向を変えることは両立する
目標に向かって進んでいても、取り組み方の変更が必要になるときがあります。例えば同じ企画で成果が出ないなら、目的は守りつつ、手段や協力相手を変えることはできます。諦めないことは、同じ方法へ無期限に固執することとは違います。
「この挑戦で何を学んだか」「次は何を変えたいか」を定期的に言葉にしてみると、努力が惰性になるのを防げます。体力や生活環境が変われば、休むことや別の道を選ぶことも合理的です。持続可能な努力には、やめる判断も含まれると考えたいところです。
同じアカデミー賞で夢を語ったルピタ・ニョンゴの受賞スピーチは、出自と希望を結び付けています。一方、ミシェル・ヨーの「全盛期は過ぎたと言わせない」は、年齢による決めつけを問い直す言葉です。同じ「夢」というテーマでも、努力・機会・年齢という別々の切り口があります。
まとめと出典――努力は「勝ったかどうか」だけでは測れない
レディー・ガガの「諦めないこと」を重視する発言は、2019年2月24日のアカデミー賞歌曲賞受賞スピーチに残っています。大切なのは、賞を受け取った事実から直ちに万人向けの成功法則を導かないことです。
勝てなかった経験にも学びはあり、挑み直す方法は一つではありません。今日の自分に合う方法を選び、必要なら形を変えていく。その柔軟さがあってこそ、諦めないという言葉は重荷ではなく支えになるでしょう。
主な出典:映画芸術科学アカデミー・2019年公式受賞者一覧、ABC「Oscars 2019 Highlights」、GRAMMY.comの2019年2月26日付紹介記事。短い原文以外は独自の日本語解説とし、歌詞や演説全文を転載していません。