都会の喧騒から

考えるための言葉と、働くための知恵を。

ションダ・ライムズ「夢見る人より行動する人に」|2014年ダートマス卒業式演説

はじめに――夢を持つだけでは何が足りないのか

「大きな夢を持とう」という助言は、卒業式や入学式で耳にすることが多い言葉です。しかし、その夢について何年も話し続けているうちに、現実の時間だけが過ぎてしまうこともあります。テレビドラマの脚本家・プロデューサー、ションダ・ライムズは、2014年のダートマス大学卒業式で、夢を語ることより実際に動くことの大切さを話しました。

彼女の言葉を英語で短く取り出すなら「be a doer, not a dreamer」です。ここでは「夢を見るだけの人ではなく、行動する人になろう」と説明訳します。夢そのものを否定するというより、夢を語ることで行動した気になってしまう危険を指摘したものです。

原典はダートマス大学が公表した2014年の卒業式演説全文です。日付の表示が異なる大学記事もありますが、式典は2014年6月8日に開催されました。発言が行われた場と、その後の紹介記事・全文公開ページを区別して扱います。

トニ・モリスンになりたかった脚本家

ライムズは大学時代、ノーベル文学賞作家になることを夢見ていたと振り返ります。具体的には作家トニ・モリスンのようになりたかったという話です。しかし彼女は、他人の人生そのものを生きることはできないと気づきました。憧れた人物を目標にすることと、その人と同じ人間になろうとすることは違います。

その後に映画学校へ進み、テレビ番組を書くという道と出会いました。『グレイズ・アナトミー』をはじめとする仕事につながったのは、最初に思い描いた理想像と異なる可能性を試したからだ、と本人は説明しています。遠回りに見える選択が、自分に合う表現方法を見つける機会になったのです。

この話は、最初の夢を諦めるべきだという命令ではありません。憧れの理由を振り返り、それを別のやり方で実現する可能性を残すということです。自分が本当に好きだったのは肩書なのか、それとも文章を書き、人に物語を届けることなのか。その問いは進路の選択にも役立ちます。

「行動する人」になるとは何をすることか

ライムズは、書き手になりたいなら実際に書き始めればよいと語っています。思い描く将来像が完全に固まっていなくても、できる仕事から取り組めるという考えです。行動とは必ずしも大胆な転職や独立ではなく、今日できる具体的な作業を始めることでしょう。

例えば文章を書きたい人なら、テーマを考え続けるだけでなく、まず一篇を書いて推敲してみます。旅をしたい人なら、予算や行き先、日程を調べるところから始められます。漠然とした願望が作業に分解されると、必要な知識と足りないものが見えるようになります。

ただし、状況によっては準備や安全確認が必要です。生活費を考えず仕事を辞めることや、他人の責任を放り出すことまで肯定されません。小さく試し、結果を確かめながら次の選択をするという現実的な実践が適切です。

社会へ目を向けるという第二の教訓

演説のもう一つの柱は、個人の夢や成功だけを人生の中心に置かないという考えです。ライムズは自分の大学卒業直後の不安を語ったうえで、学ぶ機会を得た人が周囲のために何をできるか考えるよう勧めています。自分の進路を探しながら、社会への関心を失わないことが求められています。

彼女はオンライン上の賛同表明だけで満足してしまう態度を批判し、地域の活動やボランティアなど実際の関わりを提案しました。ただし、インターネット上の呼びかけが常に無意味だという客観的な事実を示したわけではありません。共感を示すことと、問題の改善に役立つ行動を取ることを区別するための強い表現です。

一度に大きな問題を解決しようとする必要はありません。身近な課題を一つ見つけ、継続して取り組める方法を探すことから始められます。他人のための行動も、理想を語るだけで終わらせないという一貫した教訓です。

理想どおりではない人生を受け入れる

ライムズは大学を卒業したあと、期待したほど華やかな生活がすぐに始まらず、不安に感じた経験も語りました。また、テレビの仕事と家庭での責任を抱えながら、すべてを同時に完璧にはできないことを率直に認めています。成功者の人生にも、選択できなかったことや、手放した時間があるのです。

何かに集中するなら別の何かに十分な時間を使えない場合があります。その事実は、仕事を頑張る人にも家庭を大切にする人にも共通します。「全部を完璧にできる人」を理想にするより、自分が今引き受けている選択を正確に知ることが重要でしょう。

仕事の目標が変わる経験についてはコナン・オブライエンの2011年卒業式演説が参考になります。また、挑戦の出発点を考えるならミンディ・カリングの「Why not me?」も関連します。自分を励ますことと、現実の行動へ移すことを組み合わせて考えられます。

まとめ――憧れを自分の行動へ翻訳する

ションダ・ライムズが2014年に伝えたのは、夢を見る人を見下す言葉ではありません。大きな理想を描くなら、それを今日の行動へ変えてみようという呼びかけです。自分に合う目標が最初から分からなくても、何かを試すことで新しい道が見つかるかもしれません。

他人の肩書だけを追いかけると、目標を達成しても自分の満足につながらないことがあります。どういう仕事をしたいのか、何に時間を使いたいのかを確かめながら進む。行動は夢を実現する手段であると同時に、夢そのものを見直す方法にもなるのです。

出典はダートマス大学による演説全文と同大学の式典当日報道です。短い英語の原文以外は、独自に意味を説明した日本語文章で構成し、演説全文や他者の翻訳は転載していません。

ほかの記事を探す

人物や作品を詳しく読むなら、それぞれの一覧へ。仕事の記事は分野から選べます。キーワードで探したい場合は、下の検索欄をご利用ください。

記事の記述・出典に誤りや疑問点がありましたら、お問い合わせから該当記事のURLと確認できる資料をお知らせください。内容を照合し、必要に応じて訂正します。

編集方針と運営者について →