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内村航平「体操を世界で一番知っている状態にしたい」|2022年引退会見と学び続ける理由

はじめに――引退しても学びは終わらない

スポーツ選手が引退を表明したと聞くと、競技との関わりもそこで終わるように感じることがあります。しかし、体操の内村航平は、2022年1月14日の引退会見で、これからは体操を世界で一番知っている状態にしたいという将来像を語りました。選手としての区切りと、体操を学ぶ時間の終わりは同じではなかったのです。

内村はオリンピックの男子個人総合で2012年ロンドン大会と2016年リオデジャネイロ大会の2大会連続金メダルを獲得しました。輝かしい実績がありながら、現役生活を終えるときに出てきたのが「もっと体操を知りたい」という言葉だったことは印象的です。十分な実績があっても、学び終えたと考えない姿勢がうかがえます。

本記事では、テレビ東京の2022年1月14日付引退会見記録と当時の所属先・ジョイカルジャパンによる会見報告を主な資料とします。本人が語った言葉と、編集上の考察を分けて、競技人生の区切りが持つ意味を読みます。

2022年1月14日の引退会見で語られた言葉

引退会見は2022年1月14日、東京のホテルで行われました。会見の一問一答では、今後の活動を尋ねられた内村が、後輩へ経験を伝え、子どもたちへ体操の楽しさを届ける活動にも取り組みたいと説明しています。自分が競技で結果を出す以外にも、体操に関わる道を考えていたのです。

会見記録にある「体操に関しては世界で一番僕が知っている状態にしたい」という発言は、テレビ東京の本人発言を収録した記事で確認できます。そこでは、学びを続け、単に技術を極めることよりもさらに先を目指したいという意欲が語られています。「競技を辞める」から「知ることを続ける」へ、目標の形が変わっていると言えるでしょう。

ここで「世界一」という表現を、知識量を測定して他人と比較した客観的な称号と考えるべきではありません。会見で本人が示した今後の目標です。達成済みの資格やランキングではなく、これから学び続けたいという本人の意思として受け取るのが正確です。

引退の判断は、金メダルだけでは説明できない

内村は北京、ロンドン、リオデジャネイロ、東京の4大会でオリンピックに出場し、個人総合の連覇など多くの成果を残しました。しかし、競技を続けるかどうかは、過去の成績だけでは決められません。かつて世界の頂点に立てたことと、今後も同じ練習を続けられることは別だからです。

当時の所属先の公式会見報告では、2021年の世界選手権に向かう過程で先が見えないと感じ、引退の意思を固めていったことが説明されています。さらにテレビ東京の会見一問一答では、世界一の練習を続ける難しさを本人が語っています。競技者として自分に求めてきた水準との関係で判断したことが分かります。

だからといって、気力が足りなかったなどと外から単純に評価することはできません。長年の練習を積み重ねた身体の状況や、本人が置いていた目標が背景にあります。当事者が説明した理由以上の心理を、根拠なしに付け加えないことが大切です。

「世界一体操を知る」とは、競技力と同じではない

選手として優れた技術を持つことと、その技術を人に説明したり、次の世代へ伝えたりすることは重なる部分がありながら同一ではありません。内村は競技を続けてきた経験を、引退後の体操界にも生かしたいと語りました。自分ができることから、ほかの人に伝えられることへと役割を広げようとしていたのです。

例えば、長年スポーツに取り組んできた人でも、初めて体験する子どもが何を面白いと感じるかは、本人に聞かなければ分かりません。自分が高い水準で競技をした経験は大きな資産ですが、教える相手の立場を知ることも別の学びになるでしょう。

この見方は、本人が教育学の理論を発表したという意味ではありません。あくまで会見に示された本人の将来像から考えられる、筆者による応用です。会見で確かめられた事実と、そこから広げた一般論を混同しないことを心がけます。

子どもへ楽しさを伝えたいという構想

内村は会見で、子どもたちに体操は楽しいと伝える普及活動にも言及しました。競技の世界では成績や演技の難度が注目されますが、初めて体操に触れる人にとっては、身体を動かす面白さが入り口になることもあります。トップ選手の経験を、競技の外にいる人たちへつなげる方向です。

競技の魅力を広める仕事は、金メダルを取ることとは違う課題を持っています。安全への配慮、初心者の不安、年齢ごとの経験の違いなど、考えるべきことは多岐にわたります。好きな競技を人に伝えるには、新しく学ぶことも残されているのでしょう。

内村の会見から、すべての人が競技引退後に指導者になるべきだという結論は出せません。本人の選んだ将来像はその人固有のものです。自分が何に関わり続けたいかは、活動を終えた後も人によって違うと考えたいところです。

「美しい体操」にこだわった現役時代とのつながり

内村の言葉を深く理解するうえでは、競技で何を大切にしていたかを見直すことも参考になります。サイト内の内村航平「僕が目指す美しい体操」についての記事では、2011年に語られた演技の完成度への考え方を扱っています。演技の美しさを考えることと、体操という競技そのものをもっと知ろうとすることは、関心の向かう先が異なります。

競技中に必要な知識には、動きの感覚や技の完成度など、身体を通して身につける部分も多く含まれます。引退後に経験を振り返り、別の立場から見直すことで、今までとは違う問いが生まれるかもしれません。経験の長さと、問い続ける姿勢は両立するのです。

ただし、2011年の発言と2022年の会見の間に、本人の考えがどのように一貫して変化したかを証明するには、さらに多くの資料が必要です。関連する言葉を並べただけで、心の中の一本の物語を作り上げないようにしたいものです。

仕事や学び直しに置き換えて考える

この言葉は、仕事で一つの役割を終えたときにも考える材料になります。長く続けてきた仕事を離れることは、積み重ねた知識が消えることではありません。別の人へ伝えたり、新しい視点で学び直したりする道もあります。役職や役割が変わっても、関心まで失う必要はないということです。

たとえば、営業職で経験を積んだ人が後輩の育成に関わる場合、売上を伸ばす技能と、人に教える技能の違いに気づくかもしれません。そこで新たに学ぶことは、これまでの経験を否定するものではありません。積み上げたことを土台にして、問いを変えていくという考え方ができます。

もちろん、引退後も学び続けるべきだと誰かに要求する必要はありません。休むことも、新しい分野に進むことも、本人の自由です。内村の選択を一つの可能性として受け取り、自分の事情に合わせて考えることが大切でしょう。

まとめ――一つの役割が終わっても、問いは続く

本人の言葉は、テレビ東京の2022年1月14日付引退会見記録で確認できました。引退を決めた経緯については、所属先の公式発表とも照らし合わせています。後年の名言サイトではなく、会見を伝える同時代の資料を中心にした検証です。

「世界で一番体操を知っている状態にしたい」という言葉は、知識のランキングで一位になったという報告ではありません。競技者としての役割を終えた後も、体操について学び、経験を伝えていきたいという意志です。終わりを決めることと、好きなものから離れることは同じではないのです。

長く続けた仕事や活動を変えるとき、失うものばかりに目が向くかもしれません。しかし、そこに蓄積した経験を別の形で生かす道も考えられます。実績の後に残る好奇心にも価値があると気づかせてくれる発言です。

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