類は友を呼ぶとは――似ている人が集まりやすい
「類は友を呼ぶ」は「るいはともをよぶ」と読み、考え方や趣味、性格などが似ている人どうしは、自然に集まることがあるという意味のことわざです。趣味の集まりで初対面なのに話が弾むときや、同じことに熱中する仲間が増えたときによく使われます。
「類」は同じ性質や種類の仲間という意味です。「友」は親しい人だけでなく、志や目的を共有する仲間も指します。小学館『デジタル大辞泉』の「友」にも、このことわざが用例として挙げられています。血縁や長い付き合いではなく、共通点を通じてつながる関係を表しているわけです。
ただし「似た者どうしは必ず友達になる」という法則ではありません。仲間になるきっかけには環境や偶然、互いへの配慮も関わります。人間関係の傾向を表す言い回しと、相手の人格を決めつける断定を分けることが、自然な使い方への第一歩です。
どんな場面で使う? 褒め言葉にも皮肉にもなる
例えば、読書好きが集まる会に新しい友人を連れて行くと、その人もすぐ話の輪に入ることがあります。「類は友を呼ぶね」は、共通する関心を見つけたうれしさを表す言葉になります。共通点を肯定的に受け止める文脈では、温かい表現です。
一方、誰かの悪い行動を指して「その友達も同じに決まっている」と言えば、ことわざを口実にした偏見になりかねません。友人が似ている可能性と、一人ひとりを同じ評価で決めつけてよいかは別問題です。面識のない相手への悪口として安易に使うことは避けたいところです。
「類友」という略し方も耳にします。小学館『デジタル大辞泉』は「類友」を「類は友を呼ぶ」の省略として説明しています。親しい会話では略語、改まった文章では元のことわざという使い分けをすると伝わりやすくなります。
由来と『易経』――古典にそのまま書かれている?
古い中国の文献『易経』「繋辞上伝」第一章には、性質の近いものが集まり、ものごとが類別されるという趣旨の記述があります。『易経』「繋辞上伝」の原文では「方以類聚、物以羣分」という短い表現を確認できます。似た性質のものが集まるという発想は、古くから文章に現れています。
ただし、この原文に現代日本語の「類は友を呼ぶ」という七文字の定型句がそのまま記されているわけではありません。また、原文が直接に人間の友人関係だけを説明しているわけでもありません。古典に近い発想があることと、現在のことわざの初出を確定したことは異なります。
日本での使用例について、イミダス『会話で使えることわざ辞典』は、恋川春町の黄表紙『金々先生栄花夢』を出典として掲げています。国文学研究資料館は同書を1775年の刊行物と紹介しています。ただし、当記事では『金々先生栄花夢』の該当原文を直接開いて逐語照合していません。したがって日本語形の最古出現年を断定しません。
「朱に交われば赤くなる」との違い
似たことわざに「朱に交われば赤くなる」があります。しかし両者は同じことを言っているわけではありません。「類は友を呼ぶ」はもともと似ている人が集まることに注目し、「朱に交われば赤くなる」は周囲から影響を受けて変わっていくことに注目します。
例えば、料理が好きな人たちが集まって交流を始めたなら、「類は友を呼ぶ」と言えそうです。最初は料理に関心のなかった人が、周囲の影響で料理を楽しむようになったなら、後者の表現に近くなります。集まる理由を説明するのか、集まった後の変化を説明するのかが使い分けの手掛かりです。
当サイトの「十人十色」は、人によって考え方や好みが違うことを表しています。似た人が集まることと、個人ごとに違いがあることは両立します。同じ趣味の仲間でも、一人ひとりの価値観は同一ではありません。ことわざを並べると、その違いがよく見えてきます。
SNSと仕事で考える――居心地のよさと視野の広さ
興味の近い人が集まる場所は、情報を交換したり新しい挑戦を始めたりするのに便利です。仕事の勉強会でも、共通の課題があるから具体的な相談に進みやすくなります。似た人とつながること自体は、悪いことではありません。
他方で、似た考えの人だけで話していると、異なる視点が入りにくくなる場合があります。SNSの投稿や推薦機能だけで世界全体を判断せず、ときには違う立場の資料や意見にも触れたいところです。居心地のよい輪を持つことと、その外にいる人の存在を認めることは両立できます。
とはいえ、このことわざだけから人間の行動を科学的に説明することはできません。人が似た人を選ぶのか、一緒にいるうちに似るのか、共通の環境が影響するのかは、実際には区別して考える必要があります。日常の観察を、証明済みの心理学的法則として扱わないことも大切です。
まとめ――似た仲間の中で、違いも大切に
「類は友を呼ぶ」は、趣味や考え方などが近い人どうしが自然に集まりやすいことを表す、日常でも使いやすいことわざです。気の合う仲間が見つかる喜びを伝える一方、友人関係から相手の人柄を決めつける使い方には注意が必要です。
『易経』には性質の似たものが集まるという関連表現がありますが、現代日本語の定型句の逐語原典と同一視できません。『金々先生栄花夢』の使用例についても、今回は辞典による紹介の確認にとどまります。古い発想とのつながりと、日本語の初出が未確定であることを区別して説明しました。
主要出典:『易経』「繋辞上伝」第一章の原文、イミダス『会話で使えることわざ辞典』、国文学研究資料館『金々先生栄花夢』書誌、小学館『デジタル大辞泉』「類友」。現代語形の独立した初出検証は未了のため、出典状態は要検証(タグ117)です。