『三まいのおふだ』のあらすじと結末|お札を渡すのは和尚?便所の神様?異版を比較

はじめに――『三まいのおふだ』の小僧はどう助かったのか

昔話『三まいのおふだ』は、山で恐ろしい相手に追われた小僧が、不思議なお札の力を借りて逃げる物語です。小さな子どもにも親しまれている一方で、「お札は和尚さんからもらったのでは」「便所の神様がくれたのでは」と、覚えている筋が人によって違うことがあります。どちらかの記憶が必ず間違っているのではなく、出版社の違う再話に別の筋が残っています。

日本の昔話は、一人の作家が定めた唯一の正本を持たない場合があります。語り手が地域や時代によって話し方を変えたり、絵本の作者が子どもに伝わりやすい形へ再構成したりするからです。物語の大筋をつかんだうえで、違う版を比べると、昔話の面白さがよく分かります。

この記事では福音館書店の1985年刊『さんまいのおふだ』と、ポプラ社の2019年刊『三まいのおふだ』を中心に、出版社が示す書誌と内容紹介を読み比べます。絵本の全ページを実際に照合したものではないため、紹介資料にない台詞や細部まで断定しません。

基本のあらすじ――山で出会ったやまんばから逃げる

多くの再話に共通するのは、小僧が山へ出かけ、怖いおばあさんのような存在に出会う場面です。最初は親切に見えた人物が、小僧を危険へ追い込む相手だったと分かります。安心できそうな場所が突然危険な場所へ変わるところから、物語の緊張が高まります。

小僧は恐ろしい相手から離れようとしますが、普通に走るだけでは逃げ切れません。そこで大切な役割を果たすのが、持たされた、あるいは与えられた三枚のお札です。小僧の知恵とお札の不思議な働きが結びつき、危機を切り抜ける筋が物語の中心になります。

ポプラ社の2019年版紹介では、山でやまんばに出会った小僧が和尚さんから持たされた三枚のお札を使って逃げようとする、と説明されています。出版社による紹介文で確かめられるのはこの範囲であり、結末のすべての台詞や行動を逐語的に確認したという意味ではありません。

1985年福音館書店版――お札を渡すのは便所の神様

国立国会図書館に登録された『さんまいのおふだ : 新潟の昔話』の書誌では、水沢謙一が再話し、梶山俊夫が絵を担当、福音館書店が1985年2月に刊行したと確認できます。この版については、作品名だけでなく再話者と画家、刊行時期まで特定できることが大切です。

同じ国立国会図書館の書誌に掲載された出版社提供の紹介では、山へ花を切りに行った小僧が鬼ばさに追われ、便所の神様からもらった三枚のお札を次々に投げて助かる、と説明されています。ここでお札を渡す存在は和尚さんではなく、便所の神様です。

「便所の神様」と聞くと意外に思うかもしれません。しかし昔話には、身近な場所に不思議な力が宿るという語り方もあります。この版において、思いもよらない助けが現れること自体が印象を強くします。ただし神様の姿や一語一句の台詞は、紹介資料だけから付け加えないようにします。

2019年ポプラ社版――和尚さんから渡された三枚のお札

ポプラ社の公式書誌にある2019年3月刊『三まいのおふだ』では、文を中脇初枝が担当し、加来哲郎・青木稔が絵を担当しています。出版社の説明は、和尚さんが小僧に三枚のお札を持たせた、と明記しています。同じ題名でも、1985年福音館書店版とは助けが準備される場面の設定が違います。

和尚さんからお札を受け取る筋なら、山へ行く前の心配や教えが、あとになって小僧を助ける話として受け取れます。一方、便所の神様から受け取る版では、予期せぬ場所で力を貸してもらうところが強調されます。これは構成の違いについての当サイトの解釈であり、再話者自身がそう説明したと断定するものではありません。

また、教育画劇の2024年刊紙芝居は、栗拾いに行く小僧へ和尚さんがお札を持たせるという筋を示しています。2019年の一冊だけに特殊な設定が現れたわけではありません。ただし同じ和尚さんの版でも、各場面の台詞や最終的な展開が完全に一致するとは限らないため、別の作品として扱います。

「結末はどうなる?」――公開紹介から分かる範囲

福音館書店版の出版社提供紹介では、小僧が鬼ばさから逃げ延びることが示されています。教育画劇の2024年版の紹介でも、お札のおかげでお寺へ逃げ帰るところまでは確認できます。少なくとも逃げる小僧が不思議なお札に助けられるという展開は、複数の版の紹介で確かめられます。

一方、追ってきた相手を和尚さんがどう扱うか、最後にどんな言葉を交わすかは、今回閲覧した出版社の短い紹介だけでは十分確認できません。その部分は版ごとの絵本本文を直接読んで確かめる必要があります。よく知られた再話の記憶を、手元で未検証の本にそのまま当てはめてはいけません。

したがってこの記事でいう結末は、確認できた範囲での小僧の逃走と救出です。物語の最後にどのような出来事があるかをすべての版に共通する事実とはしません。「小僧が助かる」という大筋と、「やまんばがどうなる」という細部を分けておく方が、出典の違いを正確に扱えます。

まとめ――違う版を見比べる楽しみ

『三まいのおふだ』には、小僧が山で危険に遭い、三枚のお札に救われるという大筋があります。しかし、お札を渡すのが和尚さんか便所の神様かは、1985年の福音館書店版と2019年のポプラ社版で異なります。記憶が食い違うときには、まずどの再話を読んだか確かめることが大切です。

今回参照したのは国立国会図書館の1985年版書誌と出版社提供紹介、ポプラ社の2019年版公式記録、教育画劇の2024年版紹介です。各版の全文や民話の最初の採録までは確認できていません。そのため出典タグは117(要検証)とし、原型や統一された結末は断定しません。

同じように昔話の版の違いを考えたい人には、当サイトの『笠地蔵』の伝承と結末を扱った記事も参考になります。昔話には、筋を暗記するだけでは見えない地域や再話の工夫があります。ひとつの正解を急ぐより、資料に戻って読み比べることそのものを楽しんでみてください。

次に読むテーマを探す

気になる言葉や人物・作品を探すなら、以下の入口から。仕事の記事やサイト全体検索にも進めます。

記事の記述・出典に誤りや疑問点がありましたら、お問い合わせから該当記事のURLと確認できる資料をお知らせください。内容を照合し、必要に応じて訂正します。

編集方針と運営者について →

↑ ページの先頭へ戻る