はじめに|「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は何を言っている?
「あなたと、コンビに、ファミリーマート」。コンビニエンスストアの名前を覚えるための歌のように、耳に残る言葉だ。しかし、よく見ると「コンビニ」ではなく「コンビに」と、途中で区切られている。便利な店という意味と、誰かと一緒にいるという意味を、一つの音に重ねているところが特徴だ。
ファミリーマートは、この言葉を自社のコーポレートメッセージとして公式に掲げている。2017年の企業ニュースリリースでは、1989年に制定されたと説明している。有名な宣伝文句として紹介するだけでなく、会社が自分たちの姿勢を表す言葉として位置づけてきたことが分かる。
コンビニで商品を買う場面では、便利さを期待する人が多いだろう。けれども、このコピーは商品の数や営業時間の長さを数えない。便利さの向こう側に、店を訪れる一人の「あなた」を置く。短いコピーの主題は、店舗の設備そのものより、人と店の関係なのだ。
出典|1989年の制定と2017年の音商標登録
ファミリーマートの2017年10月19日付ニュースリリースによれば、「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は1989年にコーポレートメッセージとして制定された。テレビCMなどの媒体で、サウンドロゴとして長く用いてきたという。文言と制定年、使われた媒体の概要を、企業の公式記録で確認できる。
同じ発表は、この言葉が2017年9月29日に音商標として登録されたことも知らせている。音商標は、文字の表記を登録したこととまったく同じではない。音として認識されるブランド表現が、一定の制度の下で登録されたという事実であり、言葉が初めて生まれた年を示すものではない。
さらに2019年8月30日付の企業発表では、基本理念を改定するにあたり、同じコーポレートメッセージを掲げている。1989年の制定、2017年の登録、2019年の理念改定という三つの出来事を混同しない。それぞれの時期に同じ言葉がどう位置づけられたかを読むことが重要だ。
「あなたと」の意味|店より先に一人の利用者を置く
「ファミリーマートは便利です」と言われれば、サービスの特徴を説明する会社の声として聞こえる。一方、「あなたと」と始まると、話しかけられているのは不特定多数ではなく、目の前の一人になる。店が何を売るかより、誰の暮らしのそばにありたいかを示す言い方だ。
公式の基本理念では、地域に寄り添うことや、お客さま一人ひとりに合わせて努力することを大切にすると説明している。コピーの「あなたと」は、その考え方に通じる。利用者を数字として一括りにせず、一人ずつ異なる事情を持った人として扱いたいという企業側の姿勢を読み取れる。
ただし、親しい表現を使っているからといって、すべての利用者が実際に親密な関係を求めているわけではない。必要なものを手早く買って帰りたい人もいる。「寄り添う」とは相手へ踏み込みすぎることではなく、相手が望む距離を尊重することでもある。言葉の温かさを、過度な接客の正当化にしないことが大切だ。
「コンビに」の掛詞|便利さと、一緒にいること
このコピーの核心は「コンビに」という短い表記だ。ファミリーマートは2017年の発表で、便利な存在であることと、お客さまと一緒であることの二つの思いを込めたと説明している。コンビニエンスストアの「コンビニ」と、相手と「コンビになる」という感覚が重なる。
音では似ている言葉でも、書き方が変わると意味が立ち上がる。「コンビニ」と一語にしてしまえば店の業態しか見えにくい。しかし「コンビに」と区切ることで、二人組のような関係が想像できる。読点とひらがなの一文字が、ありふれた業態名を人間関係の表現へ変えると読める。
「コンビ」という言葉は、もともと協力して何かをする二人組などにも使われる。だから店にとっては、商品を渡して終わりではなく、暮らしの助けになるという姿勢を示すことができる。一方で、その関係がすべての場面で実現しているかどうかは別途確かめる必要がある。ブランドの願いと実際の店舗体験は同じものではない。
音で覚えるコピーと、実際に役立つ店の違い
音楽のように耳に残る表現は、店の名前を思い出す助けになるかもしれない。ファミリーマートはこのフレーズを長年サウンドロゴに用い、音商標を取得したと発表している。言葉の意味に加えて、音として繰り返されることもブランドの表現の一部だった。
ただし、音商標に登録されたことが、必ず販売を増やしたという証拠ではない。買い物をする人は、立地や価格、品ぞろえ、商品の品質、店員の対応など、さまざまな要素で店を選ぶ。広告を覚えていることと、店が実際に便利であることは分けて評価する必要がある。
当サイトのニトリ「お、ねだん以上。」は、支払う価格と得られる価値の関係を語る。一方、JR東海「そうだ 京都、行こう。」は、旅を決める瞬間を描く。ファミリーマートは、買う人と店との継続した関係を中心に置く点で異なっている。
まとめ|「便利」を「あなたとの関係」へ変えた言葉
「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は、ファミリーマートが1989年に制定したコーポレートメッセージだ。2017年にはサウンドロゴが音商標として登録された。業態の名前と「一緒に」という意味を掛け合わせ、便利さと人への親しみを一つの短い表現にしている。
企業理念では、地域に寄り添うことや、お客さま一人ひとりを大切にする姿勢が示されている。とはいえ、理念を掲げれば自動的に実現するわけではない。言葉が伝える約束を、日々の店づくりがどう支えるかまで考えてこそ、コピーの役割が見えてくる。
出典はファミリーマート公式・2017年10月19日付音商標登録発表、同「ファミリーマート基本理念」、同・2019年8月30日付基本理念改定発表。企業公式の文言・制定年・掛詞の意味を直接確認し、表現の効果については本記事の解釈として区別した。