オリンピック「より速く、より高く、より強く、共に」の意味と出典|2021年に変わった標語

はじめに|五輪の標語に加わった一語

「Faster, Higher, Stronger – Together」。日本語では「より速く、より高く、より強く、共に」と表される、オリンピックの標語である。競技で記録を伸ばすだけでなく、誰かと支え合うことも同じ一行に入った。最後の「共に」が加わったのは2021年であり、初めから四つの語だったわけではない。

国や文化の違う選手が集まるオリンピックは、勝敗を競う場であると同時に、参加する人々の関わりを考える場でもある。速さや強さを高めることと、他者を尊重することは矛盾するのだろうか。標語の変化をたどると、競争と連帯をどう両立させるかという問いが浮かぶ。

短いスローガンほど、誰が決めた言葉か、いつから使われているかが曖昧になりやすい。この記事では、国際オリンピック委員会(IOC)の公式記録をもとに、ラテン語の原形と改訂の日付を分け、競技の結果だけでは測れない標語の意味を考える。

出典|2021年7月20日のIOC総会

IOCの「The Olympic motto」公式解説によれば、2021年7月20日のIOC総会で従来の三語に「Together」を加えることが承認された。新しい英語表記は「Faster, Higher, Stronger – Together」であり、公式決定の日時まで確認できる。

ラテン語の標語は「Citius, Altius, Fortius – Communiter」と表記される。前の三語は速さ、高さ、強さを表し、後から加わったCommuniterが「共に」に対応する。日本語の「共に」は、競技の能力とは違う方向から標語を結ぶ語なのである。

IOCの2021年の公式発表は、連帯の大切さを改訂理由として説明している。ここで重要なのは、従来の三語が消されたのではないことだ。競技の向上を目指すという考えを残し、その条件に共同性を付け加えたと読むのが自然である。

由来|1894年の三語とアンリ・ディドン

従来の標語「Citius, Altius, Fortius」は、1894年のオリンピック運動の開始時に採用された。IOCの説明では、創設者ピエール・ド・クーベルタンが、友人でドミニコ会司祭だったアンリ・ディドンの表現を取り入れたとされる。三語の発案者をクーベルタン一人と単純化しないことが重要だ。

IOCの公式FAQは、ディドンが1891年の学校スポーツ行事でこの言葉を用いたことも説明する。近代オリンピックで採用されたのはそれより後である。学校の競技で使われた表現が国際的な標語になったという二段階の経緯がある。

この三語は、一番になった人だけを称賛する命令だと読めてしまう。しかしIOCの解説は、選手が持てる力を発揮し、よりよい競技を目指す精神として位置づけている。他人との順位だけでなく、自分の能力を高めようとする姿勢にも向けられた標語なのである。

意味|なぜ最後に「Together」なのか

「Faster, Higher, Stronger」は、それぞれ異なる能力を表す。記録が数値で示される競技なら、速さや高さは比較的分かりやすい。しかしどんな選手も、練習の環境、指導者、家族、仲間、競技の制度などから完全に独立しているわけではない。個人の努力の背景には、多くの人の支えがある。

「Together」は、勝負をなくそうという言葉ではない。相手と競いながら、競技を成立させる規則や相互の敬意は共有する。違うチームの選手が好記録を称え合うこともできる。競争する関係と協力する関係は、同じ場に共存できる。

ただし、標語に「共に」と書かれているだけで、すべての不平等や対立が解消するわけではない。参加機会、経済的な格差、安全性といった課題を実際にどう扱うかが問われる。美しい言葉と、それを具体的な制度で実現することを区別する必要がある。

現代への解釈|競い合いながら支え合う

学校の部活動では、相手チームに勝とうと努力しても、その相手がいなければ試合は成り立たない。仕事でも、自分の目標を達成するには、他の人の専門性や協力が必要になる。自分の成果を大切にすることと、支えてくれた人への感謝は両立する。

一方で「みんなで」という言葉が、個人に無理を強いる口実になる場合もある。協力するためには役割の明確さ、互いに休める環境、違う考え方を尊重する姿勢が欠かせない。連帯は、全員が同じことを考える状態ではないのである。

大きな大会でなくても、目標を一つ決め、自分の成長を測り、周りと力を合わせるという順序は生活に応用できる。高い目標を目指すほど、人との関わりを見直す価値がある。2021年の改訂を、単なる飾りではなく具体的な問いとして受け取りたい。

まとめ|三つの挑戦に加わった「共に」

オリンピックの現行標語は「Faster, Higher, Stronger – Together」である。IOCは2021年7月20日に「Together」を加え、ラテン語を「Citius, Altius, Fortius – Communiter」とした。この文言と日付はIOC公式資料で直接確認できるため、出典タグ114を適用する。

もとの三語は1894年の採用にさかのぼり、さらにディドンが学校のスポーツ行事で用いた表現へつながる。新しい語は、その歴史を消すのではなく、連帯をよりはっきり示すために加えられた。一人の向上心と、人とともに進む力を同じ標語に収めたことに意味がある。

参照した一次資料はIOC「The Olympic motto」と標語に関する公式FAQ。選手本人の言葉を読むなら、有森裕子「初めて自分で自分をほめたい」にもつながる。記録の向上と人間的な経験を両方見つめるきっかけになる。

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