はじめに|思いやりは、まず関心を持つことから
「やっぱり、人のことを思いやることじゃないでしょうかね」。黒柳徹子が2021年のUNICEFインタビューで、未来の子どもたちのために私たちに何ができるかを尋ねられたときの言葉である。大きな活動を始める前に、他の人の境遇に関心を向けることの大切さが示されている。
思いやりという言葉は、日常でもよく使われる。けれど、それがどんな行動につながるかは曖昧なままになりがちだ。黒柳は例として、飢えている子どもがいると聞いたとき、その事実に関心を持つことを挙げる。知らない人の問題を自分と無関係として通り過ぎないところから話が始まる。
この一節を、親切ならば何でも解決できるという標語にしてはいけない。世界の子どもが置かれた状況には、多くの制度的、経済的な事情がある。関心は解決の十分条件ではなく、考え始めるための入口として捉えたい。
出典|UNICEF創設75周年の本人インタビュー
原典はUNICEF東京事務所が2021年12月28日に掲載したUNICEF親善大使・黒柳徹子インタビューである。記事の終盤に「未来を担う子どもたちのためにより良い世界を築いていくには、私たち一人ひとりに今、何ができるのでしょうか」という問いがあり、黒柳の回答にこの一節が記録されている。発言者、掲載日、質問と回答の位置を原文で直接確かめられる。
インタビューでは、黒柳が戦時中に経験した空腹や不安、戦後の日本へ届けられたUNICEFの支援も語られる。「思いやり」という言葉が、抽象的な理想ではなく本人の記憶と長年の活動を背景にしていることが分かる。
ただし黒柳の人生をこの一節だけで説明し尽くすことはできない。1984年の親善大使就任からの歩みは、黒柳徹子はなぜユニセフ親善大使を続けるのかで別に扱っている。ここでは2021年に語った「今、何ができるか」への答えに集中する。
「関心を持つ」|見えない問題を見えるものにする
離れた国の子どもの暮らしは、普段の生活の中では見えにくい。黒柳は、飢えている子どものことを聞いたとき、そこへ関心を持つことを例にした。何かを知ったときに目をそらさず、自分の理解を少し広げるという小さな行為である。
ただし関心を持つとは、刺激的な話を見て一時的に心を痛めることだけではない。何が起きているのかを確かな資料で確かめ、必要とされていることを知ろうとする過程も含まれるだろう。感情を事実の理解へつなげる姿勢が大切だ。
情報を見たからといって、すべてを自分一人で引き受けることはできない。知らない問題がたくさんある現実も認めながら、関心を具体的な選択へ変えられる範囲を探したい。無関心を避けることと、無限の責任を負うことは違う。
「思いやる」|相手の側から考えてみる
思いやりは、自分がしてほしいことをそのまま相手に与えることとは限らない。相手の状況を知り、何が本当に必要なのかを確かめる必要がある。善意だけでなく、相手の暮らしへの理解を深めることが求められる。
UNICEFは子どもの栄養、教育、保健などの支援に取り組む。黒柳が語ったのは、そうした活動の専門家の役割を誰もが代替できるということではない。自分の立場でできる支援を考えるために、まず子どもたちの状況に関心を持つという順序である。
思いやりを示す方法は、お金を寄付することだけでもない。学び、話し合い、確かな情報を周囲に伝えることなどにも役割がある。相手の必要に合う行動を探すことが、言葉を実践につなげる。
身近な生活で|関心を続けられる形にする
この言葉を普段の生活へ生かすなら、まず自分の知らない人の立場について一つだけ調べてみてもよい。ニュースに出てきた国の子どもたちはどんな学校へ通い、何に困っているのか。自分の知識の空白を見つけることも、小さな一歩になる。
身近な人への接し方も同じである。困っている様子の人にすぐ助言するより、何に困っているのかを聞くことが必要なときがある。相手を理解する前に解決策を決めつけないことが、実際の思いやりにつながる。
一方で、関心を持ち続けることには負担もある。すべての問題へ同時に向き合わなくてもよい。自分が無理なく学び、協力できる範囲を見つけて継続する方が、長く関われる可能性がある。
まとめ|最初の行動は、知ろうとすること
黒柳徹子の「やっぱり、人のことを思いやることじゃないでしょうかね」は、2021年12月28日のUNICEF東京事務所による本人インタビューに確認できる。UNICEF公式の質問と回答で文言と掲載位置を特定できるため、出典確認済みとして扱える。
この言葉の中心にあるのは、特別な人だけに支援の責任を預けないという考え方だ。大きな活動が難しくても、他人の苦しさに関心を持つことは始められる。
知らない人について知り、必要なことを考え、できる範囲で行動する。思いやりを気持ちだけで終わらせないための最初の問いとして、この一節を受け取りたい。
関心を行動につなぐ別の言葉として、緒方貞子「四の五の議論はいいから、まずはアクション」もある。思いやりの入口と、現場でどう行動するかを比べて考えられる。