はじめに|変えられないことを考え続ける前に
「自分でコントロールできないことは悩んでも仕方ありません」。宇宙飛行士の古川聡が2026年3月の退職会見で、自身の27年間を振り返る中で語った言葉である。大きな夢を追いかけるときにも、自分の力が及ぶ範囲を見極める必要があることを感じさせる。
宇宙飛行は、個人の努力だけで予定が決まるものではない。機体や計画の状況、国際的な運用など、多くの条件が重なる。待たなければならない時期と、自分で準備できることを区別する判断が必要になる。
この一節は、心配する人を叱る言葉として使うべきではない。不安になること自体は自然であり、誰もが簡単に気持ちを切り替えられるわけではない。変えられない現実に向き合いながら、今日できることを探すための考え方として読みたい。
原典|2026年3月30日のJAXA退職会見
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有人宇宙技術部門が2026年3月31日に公開した古川聡宇宙飛行士の退職記者会見記録に、言葉の原文が掲載されている。3月30日の会見における、宇宙飛行士人生の振り返りを求めた質疑応答の一部である。発言者、会見日、質問と回答の位置をJAXA公式記録で確認できる。
古川は1999年に宇宙飛行士候補者へ選ばれ、2011年に初めて宇宙へ飛び立った。会見では、望んだことがすべて実現したわけではないものの、自分にできることはやり切ったと思うと話している。成果だけでなく、予定どおりにいかなかった経験を含めて振り返った点が重要だ。
続く回答では、そのときできることを一つずつ積み重ね、明日は今日より良くなると信じて歩んだとも語る。「悩んでも仕方ない」という一文の後ろには、何もしないのではなく具体的に積み重ねる姿勢がある。
コントロールの範囲|区別することで見える行動
目標のすべてを自分で決められるわけではない。選考結果、天候、組織の都合などは、努力をしても変わらない場合がある。自分の判断で変えられることと、変えられない条件を混同しないことが大切だ。
一方で、知識を増やす、訓練に取り組む、周囲と情報を共有するなど、自分で選べる行動もある。外側の状況が動かないときこそ、手元でできる準備を確かめられる。結果の保証はなくても、準備を選ぶ自由は残る。
ただし、変えられないと思っていたことが、協力や制度の改善によって変わる場合もある。現在の制約を理解することと、社会の仕組みを変える努力を諦めることは同じではない。
「悩む」と「考える」|時間をどう使うか
悩むことは、同じ心配を繰り返して疲れてしまう状態を指すことがある。考えることは、分かっている条件と次の行動を整理することにつながる。問題を見つめる時間が、どんな判断に結びついているかで違いが生まれる。
たとえば面接の結果を待つとき、評価を今から直接変えることはできない。それでも、次の機会に備えて資料を整理したり、自分の経験を振り返ったりすることはできる。変えられない結果を待つ時間にも、選べる行動はある。
一方、疲れが大きいときに常に前向きな行動を求める必要はない。休むことや誰かに相談することも一つの選択である。自分を追い込むのではなく、状況に合わせて負担を調整することも大切にしたい。
宇宙飛行士の経験から|待つ時間の意味
宇宙飛行士として選ばれてから実際に飛行するまでには、長い訓練や計画の変更がある。古川の会見にあるのも、思いどおりにならない時間を含む経験だ。夢に向かう道には、自分の努力だけでは決まらない時間がある。
それでも準備を重ねてきたことが、後に機会を迎えたときの力になる。ここで重要なのは、待てば必ず夢がかなうという単純な物語にしないことだ。成果が不確かな状況で、今できることに意味を見つける姿勢が残る。
古川自身が別の時点で語った「すべての夢が必ずしもかなうわけではない」という言葉も参考になる。今回の一節と並べると、結果が保証されないことを認めながら努力を続けるという共通の問題が見える。
まとめ|手元の一歩を選び直す
古川聡の「自分でコントロールできないことは悩んでも仕方ありません」は、2026年3月30日のJAXA退職記者会見の質疑応答で確認できる。JAXA公式の会見記録で掲載位置と文言を特定できるため、出典確認済みとして扱う。
この一節は、人生の不確実性を消す方法ではない。変えられないものに目を奪われたとき、自分が選べることを確かめ直すための視点である。
大きな未来の結果を今すぐ決めることはできなくても、今日の一歩は選べる。限界を知ることが、次にできる行動を見つける出発点になるという静かな教訓を残している。