シバニア・イーサン「大切なのは言葉を身に付けることではなく、新しい世界で違う経験をすることです」の意味と出典|研究者の越境

はじめに|海外へ行く目的は語学だけではない

海外で研究したり働いたりする理由を尋ねると、語学力を伸ばすためと答える人は多い。しかし京都大学で環境・エネルギー技術の研究に取り組むシバニア・イーサンは、「大切なのは言葉を身に付けることではなく、新しい世界で違う経験をすることです」と語った。言葉は目的のすべてではなく、異なる環境で考え方を広げるための入口という視点だ。

この発言は、外国語の学習を軽視するものではない。自分も日本で仕事を続けるうちに日本語を使えるようになったという経験を踏まえている。言語の上達だけを成果にするのではなく、知らない文化や人との出会いを通じて自分の可能性を知ることを重視したのである。

環境を変えることには緊張や不便さも伴う。一方、同じ場所で長く暮らしていると、慣れた判断が唯一の正解に見えることがある。違うやり方に触れることで、自分自身を知る手掛かりが増えるという意味を考えたい。

この名言の背景|研究者が歩いた国境を越える道

科学技術振興機構のサイエンスポータルは2023年2月22日、シバニア・イーサンを紹介する記事を公開した。英国で育ち、ケンブリッジ大学などで研究を続けた後、京都大学で高分子膜の研究や事業化に関わる人物である。研究のテーマだけでなく、異なる国や組織へ移った経験が話題になっている。

本人は初めて日本へ来た2000年には日本語がほとんど分からなかったが、2013年以降に研究室の運営などで必要になり、使いながら覚えたと説明する。その上で、日本の若い研究者にも海外で経験を積んでほしいと語った。語学の完成を待ってから世界へ出るという順序に限定しない発想が見える。

シバニアは若いころ研究者としての目標が定まらず、38歳で自分が知識を社会の課題解決へ生かしたいと気づいたとも語っている。研究や文化の異なる場所を経験した時間は、すぐ成果になることばかりではなかった。行き先を変えた経験が、後から自分の目標を見つける材料になったという文脈がある。

この名言が示す深い意味|経験は答えより問いを増やす

新しい環境では、これまで何も考えずにできていたことが通じない場合がある。会議の進め方、意見の伝え方、働く人の役割も違うかもしれない。慣れたやり方が通じないという不便さが、自分の前提に気づく機会になる。

海外での経験を積めば誰でも視野が広がるわけではない。異なる人と話さず、もとの考え方だけで判断することもできる。大切なのは、何が違うかを観察し、その違いがなぜ生まれたかを考えることだ。場所を移すという行動だけでなく、違いから学ぶ態度が必要なのである。

また、異文化に触れたからといって自分の過去を否定する必要はない。以前の知識が別の場所で役立つこともある。シバニアの高分子膜研究にも、それまでに培った専門性が生きている。持っている力を新しい状況に合わせて使い直すという意味がある。

この名言の現代的な解釈|異動や学び直しにも通じる

新しい部署へ異動した人が、最初は仕事の言葉や慣習に戸惑うことがある。しかし前の部署では見えなかった問題や、使える知識を発見できる場合もある。不慣れな状況に身を置くことは、今の専門を捨てることではなく補助線を増やすことにもなる。

旅行や交流でも、現地の文化を見て自分の生活が当たり前ではないと気づくことがある。もちろん短い滞在で相手の社会を理解したつもりになるのは危険だ。知らないことを認め、相手の話を聞くことから学びが始まるという慎みは持っていたい。

一方、海外へ行かなければ成長できないという言い方も適切ではない。身近な地域で異なる年代や専門の人と対話することでも、新しい見方は得られる。距離そのものより、自分とは異なる経験へ開かれているかどうかが重要だ。

この名言を日常生活で実践する方法|違いを見つける習慣

まず、自分の普段の仕事や生活で当たり前だと思っているやり方を一つ選び、別の人はどうしているか尋ねてみる。理由をすぐ評価せず、相手が何を大切にしているかを聞こう。正しい方法を決める前に、複数の方法が存在することを知るのが最初の一歩になる。

次に、興味を持った方法を小さく試してみる。新しい考えを一度取り入れて、何が便利で何が難しかったかを確かめる。まねすること自体が目的ではない。違いに触れた後、自分の状況へどう生かせるかを考えることが大切だ。

自分の強みを別の役割で見直す話として、久能祐子が「人と違って良かった」と語った記事も参考になる。今の環境では弱みに見える特徴も、別の場所では力になる場合があるという点で、二人の経験には共通点がある。

まとめ|語学の先にある経験の価値

「大切なのは言葉を身に付けることではなく、新しい世界で違う経験をすることです」は、JSTの2023年2月22日公開記事で、シバニア・イーサンが若手研究者の海外経験について語った一節である。本人の日本語習得と海外での仕事を振り返る文脈で発言者を確認できる。

シバニアは複数の国で研究を続けながら、自分が解決したい問題を見いだし、研究成果の実装にも取り組んだ。経験の意味は、語学の成績だけでは説明できない。異なる環境で出会った発想が、その後の目標や行動に影響し得るということだ。

新しい場所へ行くことだけを目的にする必要はない。ただ、知らない考え方に出会う機会を避けないでいたい。自分と異なる世界に触れ、そこで気づいたことを今の生活へ持ち帰る。それが、この言葉の教訓である。

ほかの記事を探す

記事の訂正・出典情報は、お問い合わせから該当記事のURLと根拠資料をお知らせください。