はじめに|続ける理由は大きな理想だけか
新しい活動を広めようとしても、思うように人が集まらず、費用や会場の問題が続くことがある。そんなとき大きな目標がなければ進めないと思うかもしれない。テックボール選手の早稲昭範は、苦しい時期を乗り越えた動機について、「単純にやっていて面白く、好きだからですね。」と語った。
この一節は、好きなら努力や資金が不要だという意味ではない。早稲は大会中止や競技の認知度不足、協会の運営など具体的な苦労を経験している。難しい現実を見つめたうえで、それでも競技自体を面白いと思える気持ちが残っていたという話だ。
仕事でも趣味でも、目的を立派に説明できなくても続けたいものがある。けれども好きな気持ちだけへ頼りすぎると、無理を重ねる危険もある。内側から生まれる動機と、続けるために整えるべき条件を分けて考えるため、この言葉を読み解きたい。
この名言の背景|ギネス記録保持者から競技の開拓者へ
日本オリンピック委員会は2026年8月24日、テックボール選手・早稲昭範、競技名WASSEへの公式インタビューを公開した。早稲はフリースタイルフットボールの選手として、寝転びながらのリフティングでギネス世界記録を持つ。2017年から新しい球技のテックボールへ取り組み、競技団体の普及活動にも関わってきた人物だ。
本人によると、最初はリフティングが得意ならテックボールも簡単だろうと思ったが、実際にはボールを止める技術や湾曲した台の反射が難しかったという。体験会では細かいルールを初めから押し付けず、ラリーの楽しさを知ってもらうよう工夫している。初心者としての驚きを、教える側の立場でも生かしている。
2020年に協会の代表を引き継いだ頃、新型コロナウイルス感染症の流行でイベントや大会が中止され、活動が止まった。資金面や競技の普及にも影響があったという。苦難の原動力を問われた場面で今回の一節が登場する。大きな成果の後から作った美談ではなく、困難だった期間を振り返った直接の回答である。
この名言が示す深い意味|好きという気持ちは続ける理由になる
仕事や競技を続ける理由には、収入、評価、仲間との約束などさまざまなものがある。そのどれも大切だが、活動している時間が面白いという感覚は、結果が出ない時期を支えることもある。外から与えられる評価とは別に、自分が楽しさを感じる部分を持つという考え方だ。
早稲の場合、好きなことは競技を続ける動機であると同時に、まだ知らない人へ伝えたい理由にもなった。体験会で最初から厳しいルールを求めず、小さな成功を楽しんでもらうのもその延長だ。自分が感じた面白さを、相手が経験できる形へ変えようとしている。
ただし、好きという言葉だけで支援の不足を正当化してはならない。競技を広めるには資金、会場、協力する人が必要になる。好きだからこそ継続できる条件を整える必要があるという見方を忘れたくない。
この名言の現代的な解釈|結果だけで活動を評価しない
新しい事業や個人制作では、始めてすぐ成果が出るとは限らない。数字を確かめることは大切だが、それだけではなぜ続けたいのかという本人の動機が見えなくなることがある。成果を検証する時間と、活動の面白さを確かめる時間を両方持つことが役に立つ。
学習でも、点数や資格が最初のきっかけになることがある。しかし学ぶうちに内容そのものを面白いと思えれば、別の疑問にも進みやすくなる。外側の目標から始まっても、自分の興味を育てることはできる。
一方で、好きだったものが負担になる場合は、休んだり関わり方を変えたりする必要がある。早稲の選択が誰にも当てはまるわけではない。続けることだけを善とせず、自分の生活と気持ちを確かめて判断する姿勢が大切だ。
この名言を日常生活で実践する方法|何が面白いのか具体化する
続けたい活動について、どの瞬間が一番面白いと感じるかを考えてみよう。技術が身についた瞬間か、仲間と話す時間か、難しい課題へ挑むことか。好きという言葉を、具体的な体験へ分けてみると自分の動機が見えやすくなる。
次に、続けるために必要な条件も整理する。時間や費用、体力、周囲の協力など、欠けているものがあれば小さな改善を考えたい。好きなことほど無理をしやすいからだ。楽しさを守るために、現実の負担へ目を向けることも大切になる。
競技へ戻った原点を振り返る例として、渡邉聡美が初心へ戻ると難しさが楽しさに変わると語った記事も参考になる。最初に感じた面白さを、長く続けるための判断材料にするという共通点がある。
まとめ|好きという原点を守るために
「単純にやっていて面白く、好きだからですね。」は、2026年8月24日公開のJOC・早稲昭範インタビューにある。新型コロナウイルス感染症の流行で大会や普及活動が止まった時期を、どう乗り越えたかという質問への回答である。
早稲は競技の楽しさを大切にする一方、体験会の内容を工夫し、協会を運営しながら普及を進めてきた。単に好きだと語るだけでなく、人が体験できる環境を作ってきた。内側の動機が、外側の具体的な行動へつながっていることが分かる。
何かを長く続けたいなら、結果を確かめながらも面白さを失わないことを考えたい。好きという気持ちを大切にし、その気持ちが無理なく続く条件も整えるという教訓が、この一節にある。