はじめに|教育は誰が決めるのか
「若者を傍観者ではなく、変化を共に生み出す当事者として認めるべきだ」。UNESCOで教育を担当するステファニア・ジャンニーニの英語発言を意味訳した一節である。教育を受ける若者自身が、教育の設計にも関わるべきだという主張を示す。
学校の仕組みは大人が決め、学生はそれを受け入れるものと思われやすい。しかし実際に学ぶ人は、制度がどこで役立ち、どこで困るかを知っている。利用する人の経験を制度づくりに生かすという問いがある。
もちろん、若い人が望むことをすべてそのまま採用するわけではない。教育には長期的な視点や安全、公平性も必要だ。声を聞くことと、根拠に基づいて判断することを両立する姿勢が大切になる。
この言葉は学校だけの話でもない。仕事の研修や地域活動でも、参加する人の意見が届くかどうかは重要だ。仕組みの対象者を仕組みの共同制作者として扱うことへ視野を広げられる。
この言葉の背景|2026年国際教育デー
UNESCOは2026年1月14日、国際教育デーの主題を「教育の共創者としての若者」に置いた発表を公開した。1月24日の国際教育デーに向けた公式な説明である。
国連の紹介記事では、ジャンニーニが若者と学生を、変革の傍観者ではなく積極的なパートナーとして認める必要があると述べた。個人の即興的な名言ではなく、教育政策に関する公式発言だ。
UNESCOは、若者を単に教育の受益者とするのではなく、制度設計から実施・点検まで参加させるべきだと説明する。意見を一度集めるだけで終わらせないことが重要とされている。
同じ資料は、参加には代表の透明性や資源、意見に対する説明が必要だとしている。参加を掲げる標語と、実際に意思決定へ関われる制度を分ける視点が示されている。
この言葉が示す深い意味|聞くだけでは参加にならない
アンケートで意見を尋ねることは、参加の入口にはなる。しかしその後に何が変わったのか知らされなければ、声が届いたか分からない。意見を受け取った後の説明責任が重要になる。
一部の声が大きい参加者だけに決定が偏る危険もある。年齢や背景、学ぶ環境が違う若者の経験をどう集めるかが問われる。参加者の多様さを意識する必要がある。
若者の意見が大人の意見と違ったとしても、それだけで未熟だと片づけるべきではない。一方、若者の提案が必ず正しいわけでもない。年齢ではなく理由と根拠を検討する姿勢が適切だ。
共創とは、責任をすべて若者へ押しつけることでもない。予算や権限を持つ側が必要な条件を整える必要がある。参加する権利と、参加できる環境をつくる責任を分けて考えたい。
現代的な解釈|利用者とともに仕組みを変える
教育で新しい技術を導入するとき、便利に見える機能が現場では使いにくい場合もある。学生と教員に実際の経験を聞くことが必要になる。設計者の想像だけで利用者の困りごとを決めないことだ。
企業の研修でも、受講者の理解度や業務の状況に応じて内容を直す余地がある。受講後の感想だけでなく、設計段階から関わってもらう方法もある。学ぶ人が何を必要とするかを一緒に考える発想だ。
ただし、すべてを多数決にすることが共創ではない。安全や専門性に関わる判断では、根拠を共有しながら最終責任を明確にする必要がある。参加と専門的判断を対立させないことが大切だ。
声を集めること自体が目的になると、回答する側に疲れも生じる。結果を説明し、反映できない理由も伝えたい。聞いたことを具体的な変更へつなげる姿勢が信頼を生む。
日常生活で実践する方法|小さな共創から始める
家庭や学校で何かを決めるとき、関係する人にどこが使いにくいか尋ねてみる。大人が答えを用意する前に、経験を聞く。当事者の視点を最初から入れることができる。
意見を集めるなら、どの範囲を一緒に決められるのか説明したい。何でも変えられると期待させないことも大切だ。参加の権限と限界を明確にすることが対話を助ける。
出てきた提案については、費用や公平性などの条件を一緒に考える。賛否だけで終わらせず、実際に試せるかを検討する。考える過程そのものに参加する機会をつくれる。
決定後には、なぜその案を選んだかを共有する。採用されなかった意見にも理由を返す。声を聞いた事実ではなく、その後の関係を育てることが共創の継続につながる。
まとめ|若者を教育の当事者として扱う
今回の意味訳は、UNESCOの2026年国際教育デーに関する公式発表と、ジャンニーニの発言を紹介した国連公式記事で裏付けられる。若者を受益者だけではなく制度の共同制作者と捉える一節だ。
共創には意見を聞く姿勢だけでなく、代表、権限、説明、実施の仕組みが必要になる。立派な標語を実際に参加できる条件へ変えることが問われる。
教育が社会へ広がる意味を別の角度から考えるなら、井深大「国民科学知識の実際的啓蒙活動」も参考になる。井深は知識の普及、ジャンニーニは学び手の意思決定参加を重視する。
身近な仕組みを見直すとき、誰が使い、誰の声が入っていないかを確かめてみたい。関係する人を傍観者にしないことから始めよう。原典:UNESCO・2026年国際教育デー公式発表、国連公式解説。