ティム・バーナーズ=リー「これはすべての人のため」の意味と出典|2012年五輪のメッセージ

はじめに|世界へ送ったわずか四語

「これはすべての人のため」。ワールド・ワイド・ウェブ(Web)の発明者ティム・バーナーズ=リーが2012年ロンドン五輪開会式で発信した“This is for everyone”を日本語にすると、こうなる。短い四語に、Webを開かれたものにしておきたいという願いが込められている。

世界中から人が集まる舞台に、技術者がコンピューターとともに登場する。しかも長い講演ではなく、短い投稿を選んだ。技術を生んだ人の功績だけでなく、技術を使う人を主役にする演出だった。

ただし「すべての人」という言葉は、すでに全員が平等にWebを使えているという報告ではない。理想を掲げることと、その理想が実現したかを確かめることは別である。

原典|2012年7月27日ロンドン五輪の投稿

W3C(World Wide Web Consortium)は2012年7月30日の公式記事で、バーナーズ=リーが開会式の舞台からこの一文をリアルタイムに投稿したと記録している。第三者が後から考えたキャッチコピーではなく、本人の当日の投稿文である。

W3Cは、Webの開かれた標準が、場所を問わず誰にも利用できる状態を支えるべきだという本人の姿勢とこの言葉を結びつけている。「This」が指す対象を、式典の演出だけでなくWebの可能性として読む根拠になる。

英国政府やWeb Foundationも式典での登場と投稿を当時記録している。2012年の発信という日時と場面が明確なので、後年の一般的な名言紹介とは区別できる。

言葉の意味|公開された技術は誰のものか

Webは多くのサイトやサービスを接続する仕組みであり、その上に個別の企業や団体がサービスを作る。共通の基盤と、そこで運営されるサービスを区別することが、開放性を考える入口になる。

誰でも参加できるという理念には、通信環境や機器の費用、言語、アクセシビリティなどの条件が関係する。単にページが公開されていても、使いにくければ参加の機会は限られる。入口が存在することと、実際に利用可能であることは同じではない。

また、開放性は安全性やプライバシーの問題をなくす魔法の言葉ではない。むしろ誰もが使う基盤だからこそ、権利や責任について議論し続ける必要がある。開かれていることと、放置されていることは違う。

今のWebで考えること|理想を使い勝手に落とす

サイト運営者にも、小さな形でこの言葉を考える機会がある。文字が小さすぎないか、リンクを見分けられるか、スマートフォンで操作できるか。「誰でも読める」と言う前に、読みにくい理由を減らすことができる。

情報が増えるほど、信頼できる出典へたどり着けるかも重要になる。公開情報の量だけでなく、その内容を確かめられる導線を考えたい。読者が自分で確認する自由を残すことも開放性の一部だ。

発言する自由と議論の場については、オーウェル「聞きたくないことを伝える権利」と比べられる。情報を届ける仕組みと、届けられる言葉の自由は関連しながらも別の課題だ。

まとめ|「みんなのため」を検証する

バーナーズ=リーの四語は、発明の所有を誇る言葉というより、受け取る人々に向けたものだ。Webの公共的な可能性を短く言い表す。

それだけでデジタル格差が解消するわけではない。技術、設計、教育、費用など、具体的な条件を変える必要がある。理念はゴールではなく、改善の基準になる。

原典:W3C「This is for Everyone: the Tweet Heard Around the World」(2012年7月30日)。2012年7月27日の五輪開会式で本人が投稿した正確な英文をW3C公式記録で確認できる。原文の四語は変更せず、日本語は説明訳とする。

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