はじめに|「やり切る」の前に課題を分ける
「目標から逆算し、課題を分解してやり切る実行力」。フェンシング・エペの中本尚志が2026年のJOCアスナビ企業説明会で自分の強みとして語った一節である。ただ努力を続けるだけでなく、何を改善すべきか分けて考える点に言葉の特徴がある。
目標を立てることは比較的簡単でも、現場で思いどおりの結果が出るとは限らない。中本の発言には、海外選手との対戦で直面した課題をどのように把握し、練習に落とし込んだかという説明が続く。抽象的な行動力ではなく、実際の競技上の課題に結びついた自己評価として読む必要がある。
この言葉は、誰でも同じ計画を実行すれば勝てるという成功法則ではない。競技の条件や選手の技術、チームの環境によって効果は違う。中本本人が何を課題と捉えたかを原典から確認して初めて、その言葉の使い方が見える。
原典|JOC2026年5月の企業説明会
原典は日本オリンピック委員会「JOCの就職支援『アスナビ』:5月15日企業説明会を実施」(2026年5月22日付)である。中本尚志(フェンシング・エペ)の本人スピーチに、問題の一節がそのまま掲載されている。話者、競技、発言場所、文言をJOCの公表テキストで特定できる。
中本は2028年ロサンゼルス大会と2032年ブリスベン大会で金メダルを目指すと述べている。また、若い頃は試合で負けて涙を流し、練習を重ねてきた経緯を語った。現在の自己評価には、長い競技経験と到達したい目標の双方が含まれる。
新型コロナウイルスの流行期には練習時間が制限され、昼休みを使って指導を受けるなど工夫したとも述べる。だからといって、どんな環境でも休みを削れば結果が出るという意味ではない。本人の過去の工夫と、一般的に推奨すべき生活習慣を混同しないことが重要になる。
「逆算」とは何をすることか
目標から逆算するとは、最終的に目指す結果を決めたうえで、そこへ至るために何を改善する必要があるかを考えることだ。ただし未来を完全に予測できるという意味ではない。現状と目標との隔たりを明らかにするための考え方と捉えるのがよい。
中本が示した具体例は、海外選手を相手にした試合終盤の勝率だった。競技全般を「頑張りが足りない」と一括りにするのではなく、どの場面で結果が出ていないかを特定している。問題が起こる場面を絞ることが、改善の出発点になる。
その後、敗因を技術、戦術、メンタルに分けて振り返ったという。こうして複数の要素に分ければ、一度の失敗を自分の能力全体の評価とする必要がない。課題を分解することは、感情的な自己否定から具体的な行動へ移る方法にもなりうる。
練習への落とし込み|何を繰り返したのか
中本は試合終盤を想定した練習を繰り返し行い、課題の改善を進めたと語る。ただ数をこなすのではなく、失敗しやすい場面に近い条件を意識していた。競技で必要な判断と動作を、練習で確かめられる形にすることがポイントだ。
技術面だけを練習すれば結果が変わるとは限らない。戦術の選択や試合の流れをどう読むか、集中の保ち方なども状況によって影響する。中本は敗因を一つの原因へ短絡させず、複数の観点で振り返った。一つの説明に飛びつかず、違う角度から問題を見る姿勢が読み取れる。
本人は、その積み重ねが接戦を勝ち切る力につながったと考えている。一方で、それは中本の振り返りを含む説明であり、独立した実験によって各練習方法の効果が切り分けられたわけではない。選手の経験談としての価値を尊重しつつ、普遍的な法則に変えないことが大切だ。
競技成績とチームでの経験
JOCの記事で中本は、2025年のワールドユニバーシアードゲームズで日本勢初となる男子エペ団体の金メダルを獲得したと紹介している。ここでの記述はJOC掲載のスピーチに基づく。結果の紹介と、その原因について本人がどう理解しているかは分けて読む必要がある。
また中本は早稲田大学のフェンシング部で主将を務め、意見が対立したときには一人ひとりと向き合ったと語る。個人の競技力を磨くだけでなく、他者の考えを整理してチームの目標にまとめた経験がある。分解して考える力を、技術の課題だけでなく人との協働にも広げていると解釈できる。
ただし、人間関係の問題を技術的な課題と同じように整理すれば、すべて解決するわけではない。意見の違いには立場や価値観も関わる。分析しながらも相手の話を直接聞くという両面を保つことが、実際の仕事では重要になる。
仕事で使うなら|目標と行動をつなぐ
仕事の現場でも、売上や品質などの目標を掲げても、どこを改善すればよいか分からないことがある。現状を調べ、問題を作業の種類や場面に分けることは役立つ。大きな目標を、具体的な改善行動へ変換するという意味では競技との共通点がある。
一方、競技での経験をそのまま営業や開発へ移せるわけではない。扱うデータも、相手の立場も、意思決定の範囲も異なる。抽象的な方法を参考にしつつ、その仕事で実際に確認できる事実へ戻すことが必要だ。
同じJOCの説明会で、千葉大輝は「競技と仕事の両面で挑戦し続け」と語った。千葉は二つの活動をどう続けるか、中本は目標へ向けて課題をどう扱うかに焦点がある。競技者の言葉を一つの精神論にせず、それぞれの判断対象を比べると学びが深まる。
まとめ|自分の強みを方法として説明する
中本尚志の「目標から逆算し、課題を分解してやり切る実行力」は、2026年5月のJOCアスナビ企業説明会で本人が語った言葉だ。海外選手との試合終盤を分析し、技術・戦術・メンタルに分けて改善したという具体的な経緯と結びついている。
この一節は、目標を立てれば自動的に成果が出るという約束ではない。問題を観察し、考えを分解し、改善案を試すという一連の行動の表現である。課題の大きさに圧倒されず、何を確かめるべきかを具体化する方法として読むことができる。
原典確認:JOC公式「5月15日企業説明会を実施」(2026年5月22日付)、中本尚志のスピーチ欄。タグ114根拠:同欄に「目標から逆算し、課題を分解してやり切る実行力」を本人の自己評価として直接確認。スポーツ選手・指導者の名言ハブからほかの競技の言葉にも進める。