シャープ「二意専心 誠意と創意」の意味と出典|1973年の経営信条を読む

はじめに|誠意と創意を一つの仕事に

シャープは経営信条に「二意専心 誠意と創意」を掲げている。誠意は人や社会に真摯に向き合う姿勢、創意は新しい工夫を生む姿勢と読める。異なる二つの言葉を並べることで、相手への責任と新しい価値を生み出す力を、一つの仕事の中で両立させるという方向が示されている。

「二意」とは、二つのことへ心を配るという表現である。「専心」は一つの仕事に心を集中するという意味で読むことができる。相反するようにも見える二つの語を重ねて、誠意と創意を両方大切にしようとする。どちらかだけを立派な美徳として掲げないところに特色がある。

誠意だけなら、相手を大切にしても新しい問題を解決する方法が生まれない可能性がある。創意だけなら、独創的なアイデアが相手の求めるものとずれてしまう場合がある。信頼に足る仕事と、新しい発想を組み合わせることが言葉の中心になる。

ただし、経営信条が存在することと、企業のすべての事業活動でその理想が常に実現されていることは別である。理念は評価の基準になる一方、実績の証拠ではないという区別を忘れずに読みたい。

原典|シャープの公式経営理念・経営信条

出典はシャープ株式会社の「経営理念・経営信条」公式ページである。1973年に経営理念と経営信条を明文化したと説明し、信条の中心に「二意専心 誠意と創意」を置く。企業自身が公開するページで、制定時期と位置づけ、逐語表現を直接確認できる。

公式の説明では、経営理念は会社が目指す姿であり、経営信条はその理念を実現するために全社員が大切にすべき考え方だとされる。企業の存在目的と、日々の行動の指針を分けて位置づけている点が重要である。

シャープは創業者・早川徳次の経営思想をこの二つにまとめてきたと説明する。独自の技術をもって文化と福祉の向上に貢献するという理念と、誠意と創意を重視する信条が組み合わさる。企業として目指す社会的な価値と、それをつくる仕事の姿勢がつながっている。

なお公式ページは、1973年に明文化されたことを示すが、文章の草案を誰がいつ一字ずつ考えたかまで説明するものではない。文言と制定年の直接確認を、制作過程全体の解明と混同しない。

「誠意」の意味|相手を基準にする

誠意には、約束を守る、相手の困りごとを理解する、誤りを隠さないといった具体的な行動が含まれうる。技術力が高い企業でも、相手に必要な価値を理解しなければ信頼されにくい。仕事の正しさを自分の都合だけで決めない態度を考えられる。

公式資料は、徹底した顧客視点の実践をこの信条と結びつけている。顧客視点とは、言われたことを無条件にすべて受け入れるという意味ではない。利用者にとって何が役立つかを聞き、品質や安全を確かめることが重要だ。相手を尊重することと、守るべき基準を持つことを両立する必要がある。

誠意を抽象的な気持ちで終わらせないためには、誤解が起きたときに説明することや、実際の仕組みを改善することが求められる。よい意思を持っていると語るだけでなく、その意思を行動へ結びつけることが難しい部分である。

一方で、まじめに対応する人が無理をし続けなければならないという読み方も避けたい。顧客への誠意と働く人の生活を守ることは、企業の中で並行して考えるべき課題だ。誰かの善意だけに頼らず、よい対応を続けられる仕組みも大切になる。

「創意」の意味|新しい解決の仕方を考える

創意とは、思いつきだけを称賛する言葉ではない。既存のやり方を調べ、その限界を理解し、どう改良すればよいか考えることも含まれる。新しさを目的にするのではなく、問題に対して新しい答えを作る姿勢だ。

公式ページは独創的なモノづくりをシャープの根幹としている。ものを作る企業には、製品の性能や使いやすさ、長く使えるかといった具体的な条件がある。アイデアの独自性と、利用者にとっての実用性を分けずに考えることが必要となる。

創意を働かせるためには、失敗や未完成の案を扱う時間も必要だろう。最初から正解を求めすぎれば、新しい提案を出しにくくなる。試して学ぶ余地をつくりながら、責任ある判断を重ねることで、工夫が仕事に根づく。

ただし新しい商品が出れば社会への貢献が自動的に証明されるわけではない。新しい技術がもたらす利点と、費用や環境への負担などを検討する必要もある。独創性を測ることと、その社会的な意味を評価することは別の問いである。

二つを両立させる仕事とは

誠意と創意は、ときに緊張関係を生む。従来の約束を守ろうとすれば新しい試みは難しくなり、変化を急げば周囲の不安が大きくなることもある。相手への説明を尽くしながら、新しい方法へ進む判断が求められる。

日々の小さな改善でも、利用者がどこで困っているのか確かめ、その理由に合った変更を試すことはできる。これは大きな発明だけに限らない。相手の声を聞く誠意と、仕組みを見直す創意を一つの工程にする方法である。

会社の理念が本当に役立つかを考えるときは、気持ちのよいスローガンとして受け取るだけでなく、日々の判断にどう影響するかを見る必要がある。理念を判断の道具として使い、必要なときに実際の行動を確かめることが重要だ。

同じく経営理念に短い言葉を据えるカシオ「創造 貢献」の記事と比べると、シャープが誠意と創意という二つの仕事の姿勢を強調していることが分かる。異なる企業の言葉を比べ、どんな価値を大切にしているかを読む入口になる。

現代への問い|新しさと信頼を両立する

仕事で新しい道具を取り入れるとき、便利だからという理由だけでは十分でないことがある。相手が困らないか、情報は正確か、変更をどう説明するかを考える必要がある。新しいものを試す勇気と、相手を尊重する責任を同時に持つことが信条の現代的な読み方になる。

一方で、慎重さだけを重んじれば、昔からの不便をそのままにしてしまう場合もある。何を維持すべきかと何を変えられるかを分け、試行錯誤する余地を残したい。変えないための誠意ではなく、よくするための誠意という問いも生まれる。

「誠意と創意」は一見、どの職場にも使える言葉だが、企業として掲げた原典をたどると、創業から続くモノづくりと社会への貢献という文脈がある。普遍的に見える短句も、誰がどんな仕事のために掲げたのかを確かめることで意味が深まる。

これから技術がどれだけ変わっても、相手に対する誠意と新しい解決を探す創意の緊張関係は残るだろう。理念を暗記するより、目の前の判断で二つをどう両立できるか問い直したい。信頼される仕事と、新しい価値を生む仕事を分けないという課題が、この一節に残されている。

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