23歳のとき、東京に来た。
野心があったわけではない。東京で何者かになりたかったわけでもない。
当時、大切だった人を追って来ただけだった。
その関係が終わったとき、東京にいる理由も一緒になくなった。
それでも、地元へ帰ろうとは思わなかった。
なぜなのかは、今でもよく分からない。
しばらくは、東京で生きていく資格を得るような気持ちで働いていた。
人の多さにも、電車にも、家賃にも慣れた。仕事も変わった。知っている場所が増え、知らない街ではなくなった。
それでも、ときどき思う。
東京に来て、本当に良かったのだろうか。
たぶん、この問いには答えがない。
東京に来なかった人生を生きることはできないし、今の人生だけを見て、別の人生より良かったと証明することもできない。
ただ、東京に来たことで出会った人がいる。知った仕事がある。考えるようになったことがある。
失ったものも、たぶんある。
何でもあるように見えて、自分が欲しいものだけは簡単には見つからない街。
その喧騒の中で、ときどき立ち止まって、自分がどこへ向かっているのかを考える。
東京に来て良かったのか、今でもわからない。
でも、分からないままここにいることにも、いつか意味ができるのかもしれない。