はじめに
「人間的な、余りに人間的なものは大抵は確かに動物的である」。この言葉は、芥川龍之介『侏儒の言葉』に確認できます。
『侏儒の言葉』は短い警句を大量に集めた作品ですが、芥川自身が序文で、これは必ずしも自分の思想をそのまま伝えるものではなく、思想の変化を時々うかがわせるものだと注意しています。
「人間的」という褒め言葉をひっくり返す
「人間的」という言葉には、温かさ、共感、豊かな感情といった肯定的な響きがあります。
芥川はそこへ「余りに人間的なものは動物的だ」と返します。
人間らしさを無条件に高貴なものとして扱わず、欲望、嫉妬、恐怖、性欲、自己防衛といった身体的・動物的な要素まで含めて見る視線です。
人間を動物より上に置く自己評価への疑い
この警句は、「人間は動物だから悪い」と単純に蔑んでいるわけではありません。
むしろ、自分たちだけを理性や道徳によって動物から切り離し、特別な存在として語る人間の自己理解へ疑いを向けています。
『侏儒の言葉』には、道徳、理性、恋愛、自由など、人間が高尚な名を与えるものを一度裏返して見る警句が多くあります。この一文もその流れに置けます。
まとめ
この文章は『侏儒の言葉』に確認できる芥川の警句です。
人間らしさを賛美するのではなく、そこに動物的な欲望や本能が混じっていることを見る。高尚な自己像を一度疑う芥川の皮肉として読むと、短い一文の働きが見えてきます。
出典メモ:芥川龍之介『侏儒の言葉』。青空文庫公開本文で確認。