会議で全員が同じ方向を向いているとき、「あえて反対側から考えてみる人」がいると、見落としていた前提が見えることがあります。
その役割を表す言葉が悪魔の代弁者(devil’s advocate)です。
反対することが目的ではない
悪魔の代弁者は、自分が本当に反対しているかどうかとは別に、議論を検証するため意図的に反対側の論点を提示する役割です。
結論を壊すためではなく、壊れやすい場所を先に見つけるために反対する。
「誰も反対しない会議」への処方箋
グループシンクの記事では、沈黙と賛成は同じではないと書きました。
ただ、「自由に反対してください」と言われても、立場や空気があれば簡単ではありません。そこで反対意見を個人の勇気ではなく役割として置く発想に意味があります。
AIにも反対役を頼める
生成AIとの壁打ちでも使えます。「この案に反対する顧客なら何を言うか」「採用されない理由を挙げて」「前提が間違っているとしたらどこか」と聞く。
ただしAIの反論は、反論であるだけで正しいわけではありません。目的は反対意見を増やすことではなく、自分の視野の外にある検証点を見つけることです。
マーケティングでは「買わない理由」を考える
企画を作る側は、どうしても「なぜ売れるか」を考えます。
逆に、なぜ顧客は動かないのか。なぜ現状維持を選ぶのか。導入すると誰が困るのか。稟議で止まるとしたらどこか。
これは企画を否定するためではなく、顧客理解を深めるための反対意見です。
反対意見にも、反対していい
悪魔の代弁者を置けば自動的に良い意思決定になるわけでもありません。反対すること自体が目的になることもあります。
賛成案を疑う。反対案も疑う。そのうえで決める。
悪魔の代弁者は、正しい答えを持つ人ではなく、答えを少し丈夫にするための役割なのだと思います。
出典メモ:「devil’s advocate」は、カトリック教会の列聖手続きで候補者に不利な論点を検討した役職に由来する表現として知られます。現代では、議論を検証するため意図的に反対側の立場を提示する意味で広く使われています。