はじめに
「眼は盲目なんだ。心で探さないといけない」。この言葉は、サン=テグジュペリ『Le Petit Prince(星の王子さま)』第25章に確認できます。
フランス語は “Mais les yeux sont aveugles. Il faut chercher avec le coeur.”。この場面で話しているのは作者本人でもキツネでもなく、王子さまです。
似た言葉として、第21章のキツネによる「大切なものは目に見えない」がありますが、二つは別の場面です。
井戸の水を飲んだ後の場面
砂漠を歩いた王子さまと飛行士は、ようやく井戸を見つけます。水はただ喉を潤す物質ではなく、夜の歩行、滑車の音、身体を使った労力まで含んだ特別なものとして描かれます。
王子さまは、人々が何千本ものバラを育てながら探しているものを見つけられないと語り、探しているものは一輪のバラや少しの水の中にも見つけられると言います。
その流れで、「眼は盲目なんだ。心で探さないといけない」と続けます。
キツネの「心で見る」と何が違うのか
第21章でキツネは、関係を結ぶことを説明しながら「心で見なければよく見えない」という秘密を王子さまへ伝えます。
第25章では、その考えを受け取った王子さま自身が「心で探す」と語ります。
つまり同じ思想の単純な繰り返しではなく、キツネから教えられた考えが、王子さま自身の言葉として別の場面に現れると読むことができます。
「心」は感情だけを意味しない
ここで「心で探す」を、直感だけを信じればよいという反知性主義にする必要はありません。
作品で重要なのは、時間を使うこと、関係を結ぶこと、世話をすることです。バラが特別になるのも、王子さまが時間を費やしたからです。
目に見える数量だけでなく、関係や経験によって生まれる価値まで含めて探すという方が、作品全体の流れに近いでしょう。
まとめ
「眼は盲目なんだ。心で探さないといけない」は、『星の王子さま』第25章で王子さまが語る真正な台詞です。
第21章のキツネの「心で見る」という秘密と響き合いますが、話者も場面も異なります。
目に見えるものを否定するのではなく、関係や時間によって生まれる価値を、表面だけで見失わないための言葉として読むことができます。
出典メモ:Antoine de Saint-Exupéry, Le Petit Prince, chapitre XXV, 1943.
『星の王子さま』作品ページへ → キツネ、王子さま、飛行士の話者を分けながら作品全体を読めます。
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