はじめに
「初恋とは少しばかりの愚かさと、ありあまる好奇心のことだ」という言葉には、ショーの戯曲『John Bull’s Other Island(ジョン・ブルのもう一つの島)』第4幕という明確な出典があります。
原文は “First love is only a little foolishness and a lot of curiosity.” 。ただし、これはショー本人が読者へ直接語った恋愛論ではありません。話者はイギリス人実業家ブロードベントです。
ノラに「私はあなたの初恋ではないの?」と聞かれた場面
第4幕でノラはブロードベントに、自分が彼の初恋ではないのかと問いかけます。
それに対しブロードベントは、初恋は「少しの愚かさと多くの好奇心」にすぎず、自尊心のある女性ならそれにつけ込まない、と軽妙に返します。
つまり、この一節は若者の恋愛を客観的に分析した心理学ではなく、過去の恋愛を軽く扱い、自分を都合よく弁護する人物の会話でもあります。
後半まで読むと、印象が変わる
流通する名言では「First love is only…」だけが切り取られます。しかし原文は、そのあと「本当に自尊心のある女性なら、それにつけ込んだりはしない」と続きます。
さらにブロードベントは、過去の恋愛が「たいてい相手が既婚者だった」などと話し、かなり滑稽で自己正当化の強い人物として描かれます。
短句だけを「ショーが初恋の本質を洞察した」と読むより、誰が何のために言っているのかまで戻す方が戯曲として面白くなります。
初恋を美化しすぎない、という読みはできる
現代に引き寄せるなら、初めての強い感情を、そのまま「運命」や「永遠」の証拠としない視点にはつながります。
しかし、これは作品から広げた読みです。ショーが「初恋は全部愚かだ」と断定したわけでも、恋愛心理学の一般法則を示したわけでもありません。
まとめ
「初恋は少しの愚かさと多くの好奇心」は、ショー『ジョン・ブルのもう一つの島』第4幕に確認できる真正な台詞です。
ただし話者はブロードベント。作者本人の独立した恋愛哲学ではなく、人物の性格と会話のユーモアを作る言葉として読む必要があります。
出典メモ:George Bernard Shaw, John Bull’s Other Island, Act IV, Broadbent.
バーナード・ショーを人物から読む
ジョージ・バーナード・ショー人物ページでは、本人が書いた警句、戯曲の登場人物の台詞、後世に付与された出典未確認の言葉を区別しながら、逆説・教育・欲望・社会批評を横断して読めます。
原典:George Bernard Shaw, John Bull’s Other Island, Act IV|Project Gutenberg