「生きることの意味と価値について問いかけるようになると、我々は狂ってしまう。」
フロイトの名言として流通する日本語です。出典そのものは確認できますが、日本語には注意が必要です。
出典は1937年8月13日の書簡
Freud Museum Londonは、フロイトが1937年8月13日にマリー・ボナパルトへ送った書簡として、次の文章を紹介しています。
The moment a man questions the meaning and value of life, he is sick, since objectively neither has any existence.
出典:Freud Museum London「American Optimism」
書簡集では Letters of Sigmund Freud に収録され、マリー・ボナパルト宛書簡として参照されています。
“he is sick” は「狂ってしまう」なのか
原文の he is sick は、通常は「病んでいる」「病的な状態にある」といった意味です。
日本語で流通する「我々は狂ってしまう」は、それより強い表現です。さらに原文は「問いかけると狂う」という未来の因果ではなく、そう問う状態をフロイトが病的だと評価している文章です。
一般的な人生哲学として書かれた文章ではない
旧記事では、この言葉を「意味や価値は客観的に存在しない」という哲学的な人生論として展開していました。
しかし出典は、晩年のフロイトが友人のマリー・ボナパルトへ送った私信です。続きでは、不満足なリビドーや悲しみ、抑うつへ話が進みます。
したがって、フロイトの思想全体を一行で代表する哲学命題として扱うより、特定の書簡に現れた挑発的な見方として読む方が安全です。
出典状態
意訳・文言変化。1937年8月13日のマリー・ボナパルト宛書簡に原文を確認できますが、日本語の「狂ってしまう」は原文 “he is sick” より意味を強めています。
フロイト人物ページへ → 精神分析・『文明とその不満』・書簡と、名言の翻訳差を横断して読めます。