はじめに
「Stay Hungry. Stay Foolish.(ハングリーであれ。愚か者であれ)」。スティーブ・ジョブズを象徴する言葉として知られています。
ジョブズが2005年のスタンフォード大学卒業式でこの言葉を語ったことは事実です。しかし、ジョブズ自身が作った言葉ではありません。演説の中で、若い頃に愛読していた『Whole Earth Catalog』の最終号に載っていた言葉として紹介しています。
ジョブズ自身が出典を説明している
演説の終盤でジョブズは、1960年代後半にStewart Brandらが制作した『Whole Earth Catalog』について語ります。それを「自分たちの世代の聖書のようなもの」と表現し、最終号の裏表紙に田舎道の写真とともに “Stay Hungry. Stay Foolish.” と書かれていたと振り返りました。
そして、それを同誌から読者への別れのメッセージだったと説明したうえで、自分も卒業生に同じことを願うとして演説を結びます。
「愚か者であれ」をジョブズの成功哲学だけにしない
現在は「既成概念を壊し、失敗を恐れず挑戦せよ」というジョブズの人生哲学として説明されることが多い言葉です。その読み方が完全に間違いとは言えません。
ただし原典の関係を消してしまうと、「ジョブズが自分の人生から作った名言」へ変わります。実際には、若いジョブズが他者から受け取った言葉を何十年も大切にし、次の世代へ引用して渡した場面です。
引用した言葉も、その人の思想を示す
他人の言葉だったから価値が下がるわけではありません。むしろ、何を覚え、何十年後にも語り継いだかを見ることで、ジョブズが若さ、好奇心、未完成であることをどう捉えていたかが分かります。
名言の出典を確かめる目的は、「本人の言葉ではない」と切り捨てることではなく、言葉が誰から誰へ渡ったのかまで含めて読むことです。
まとめ
“Stay Hungry. Stay Foolish.” はジョブズが2005年のスタンフォード演説で実際に語った言葉ですが、本人の造語ではありません。
ジョブズ自身が、『Whole Earth Catalog』最終号に載っていた言葉として出典を明かしています。したがって、「ジョブズの名言」というより、「ジョブズが人生の終盤まで大切にして卒業生へ渡した引用」として読むのが正確です。
出典メモ:Steve Jobs, Stanford University Commencement Address, June 12, 2005. Jobs explicitly attributes the phrase to the final issue of The Whole Earth Catalog.
スティーブ・ジョブズの人物ページへ → 本人の演説・口述史・インタビューから、引用と本人発言を区別して読めます。
一次資料:スタンフォード大学「2005年ジョブズ卒業式演説・準備原稿」(2005年6月12日)。ジョブズが「Stay Hungry. Stay Foolish.」を実際に語り、『Whole Earth Catalog』最終号の裏表紙の言葉として紹介したことを確認できます。ただし、同誌最終号の現物における掲載位置・表記は今回照合していません。