はじめに
「ベストを尽くして失敗したら、ベストを尽くしたってことさ」。この日本語に対応するスティーブ・ジョブズ本人の発言は、1998年11月9日の『Fortune』インタビュー “The Three Faces of Steve” に確認できます。
If I try my best and fail, well, I tried my best.
ただし、この一文だけを「失敗しても努力には価値がある」という一般的な励ましにすると、元の文脈が消えます。
文脈は「Appleへ戻る」という大きなリスク
ジョブズは1997年、経営危機に陥っていたAppleへ事実上の経営責任者として戻りました。1998年のインタビューでは、その判断を引き受ける前に、Pixar、家族、自分の評判への影響を考えたと話しています。
それでも「これは自分がやりたいことだ」と決め、「最善を尽くして失敗したなら、最善を尽くしたことになる」と語りました。
「努力すれば失敗も成功になる」という話ではない
この言葉は、結果を問わなくてよいという意味ではありません。インタビュー全体ではApple再建の現実的な経営判断についても語っています。
重要なのは、失敗の可能性があるから挑戦しないのではなく、自分が引き受ける価値のある仕事なら、失敗する可能性まで含めて選ぶという姿勢です。
直前では「芸術家は失敗の危険を取り続ける」と語る
この発言の前でジョブズは、ボブ・ディランやピカソを例に、優れた芸術家は成功した型に安住せず、失敗するリスクを取り続けると論じています。
そして「Appleも自分にとっては同じだ」と続けます。だからこの一文は、努力一般よりも、成功によって守るものが増えた後でも、もう一度失敗の可能性へ踏み込めるかという問いに近い言葉です。
まとめ
「ベストを尽くして失敗したら、ベストを尽くしたってことさ」には、1998年の『Fortune』インタビューへ戻れる本人発言があります。
原典では、Appleへの復帰という大きなリスクを前に、Pixar、家族、評判まで考えたうえで、それでも自分がやりたい仕事を選ぶ場面でした。「失敗は気にしなくてよい」ではなく、「失敗する可能性を理由に、本当にやりたい仕事から退かない」という文脈です。
出典メモ:Brent Schlender, “The Three Faces of Steve,” Fortune, November 9, 1998.
スティーブ・ジョブズの人物ページへ → Apple復帰、NeXT、Pixar、集中と失敗のリスクを本人資料からまとめて読めます。