「人生の目的に対する疑問は無限といってよいほど提出されてきたが、満足できる答えは与えられていない。」
フロイトの言葉として流通するこの趣旨には、『文明とその不満(Civilization and Its Discontents)』第2章に明確な原文があります。
原典は『文明とその不満』第2章
英訳では、フロイトは「人間の生の目的についての問いは数え切れないほど提起されてきたが、満足できる答えはまだなく、おそらくそのような答えを許さない問いなのかもしれない」という趣旨を書いています。
出典:PBS「Freud: Civilization and Its Discontents, Chapter II」
「答えが許されない」ではなく、「答えを持たない問いかもしれない」
日本語では「そのような答えはおそらく決して許されないものなのだろう」と訳されることがあります。
しかし英訳の perhaps does not admit of one は、道徳的に「答えてはいけない」という意味より、そもそも満足できる答えを持たない問いなのかもしれないという意味に近い表現です。
フロイトはそこで思考を止めていない
この一節だけを抜くと、「人生の目的など考えても無駄だ」という虚無的な言葉に見えます。しかしフロイトは続けて、より小さな問いへ移ります。
人間は実際に人生から何を求めているのか。その答えとして、苦痛を避け、快を得て、幸福になろうとする人間の行動へ話を進めます。
つまり、抽象的な「人生の目的」を退けたあと、人間の具体的な欲求と幸福の問題へ問いを組み替えているのです。
出典状態
意訳・文言変化。『文明とその不満』第2章に対応する原文を確認できますが、日本語の「答えは許されない」は原文のニュアンスをやや強く変えています。
『文明とその不満』作品ページへ → 人生の目的、幸福、孤立、文明と欲望の緊張を作品全体で読めます。
フロイト人物ページへ → 精神分析・『文明とその不満』・書簡と、名言の翻訳差を横断して読めます。