はじめに
「人生を明るいと思う時も、暗いと思う時も、私は決して人生をののしるまい」。この言葉は、ヘルマン・ヘッセが1915年に書いた詩「An die Freunde in schwerer Zeit(困難な時代の友人たちへ)」の一節に由来します。
原詩では Ob ich’s hell, ob trüb gefunden, / Nie will ich das Leben schelten. と書かれています。説明的に訳せば、「明るく感じても、曇って感じても、私は人生を責めまい」という趣旨です。
1915年という「困難な時代」
この詩が書かれたのは第一次世界大戦中です。ヘッセは1914年の開戦当初には志願しましたが、兵役不適格となり、その後まもなく戦争と国家主義的な熱狂への批判を強めました。
1914年11月には反戦的な論説「O Freunde, nicht diese Töne!」を発表し、その後も捕虜への書籍支援や反戦的な文章を続けます。
したがって「暗い時も前向きに」という一般的な励ましだけで読むと、この詩が置かれた歴史的な重さが薄くなります。
晴天と嵐は「同じ空の表情」
続く連では、日差しと雷雨が同じ空の異なる表情として描かれます。甘い運命も苦い運命も、自分が受け取るものとして引き受けようとします。
これは「苦しみには必ず良い意味がある」と断定することとは違います。詩が示すのは、現在は苦痛にしか見えない経験についても、後から別の読み方が生まれる可能性を残しておく態度です。
人生肯定は、現実肯定ではない
ヘッセは同時期、戦争そのものには批判的でした。だから「人生をののしらない」を、起きていることすべてを受け入れて従う意味にすることはできません。
人生そのものを否定しないことと、戦争や社会のあり方を批判しないことは別です。むしろ、人生の価値を守ろうとするからこそ、破壊や憎悪に反対するという方向へもつながります。
まとめ
「明るくても暗くても、人生をののしるまい」は、1915年の詩「An die Freunde in schwerer Zeit」に確認できます。
原典へ戻ると、単なるポジティブ思考ではなく、戦争の時代にあっても人生そのものへの信頼を手放さないという詩として見えてきます。
出典メモ:Hermann Hesse, “An die Freunde in schwerer Zeit”, 1915. 『Sämtliche Werke』Band 10, Die Gedichte に収録。
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