流通文は逐語引用ではなく、友情論の要約
「我々は自分の友人に対しては、自分に対して行ってもらいたいように、振る舞うべきである。」という言葉は、アリストテレスの名言として紹介されることがあります。
しかし、この日本語にそのまま対応する一文を『ニコマコス倫理学』で確認することはできません。一方、第9巻第4章には非常に近い思想があります。アリストテレスは、友人に善を願うこと、共に生きること、喜びや悲しみを共有することなど、友情の特徴が人間の自分自身への関係から生じると論じています。
「友はもう一人の自己」という文脈
善い人は自分自身に善を願い、自分と共に生きることを喜びます。そして友人にも同じように向き合うため、友は「もう一人の自己」のように捉えられます。
現在流通する「自分がしてほしいように友へ振る舞う」という文は、この議論を分かりやすく整理した表現としては理解できますが、引用符を付けてアリストテレス本人の逐語発言とするのは避けるべきです。
単純な黄金律とは少し違う
アリストテレスの友情論は、単発の親切の交換だけを論じているわけではありません。友の善を友自身のために願い、生活や感情を共有する継続的な関係を扱っています。
出典について
判定:『ニコマコス倫理学』IX.4に近い原典を確認/現在の日本語は要約・文言変化。
原典:Aristotle, Nicomachean Ethics, Book IX, Chapter 4. Perseusで第9巻を読む
アリストテレス人物ページと、『ニコマコス倫理学』作品ページでは、友情・徳・幸福の議論を横断して読めます。
引用の判定基準は出典ステータスの読み方にまとめています。
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