「逆に言えば、いじりまわせるような建築でなくてはいけないわけで。」
建築家・伊東豊雄が、佐藤可士和との2018年の対談で語った発言です。完成後に使い方や運用を更新していける建築について述べています。単に好き勝手に建物を改造すべきだという意味ではなく、設計から利用者が関わることを論じた会話です。
完成して終わりではない建築
今治タオル公式ブランドサイトで2018年10月18日に公開された伊東豊雄氏×佐藤可士和氏トークセッション(前編)で、伊東は公共建築の設計前から住民と話し合う方法を説明しています。建築家が完成形を提示して終わりにするのではなく、つくる過程そのものを開くという考え方です。
対談で先に、竣工後も更新する方が自然だと提案したのは佐藤可士和です。それを受けて伊東が「逆に言えば」と応じ、冒頭の発言をしています。話者と応答の順序を区別すると、独立した建築格言ではなく、対話の中で意味が育つ言葉だと分かります。
「いじる」は欠陥修正ではなく、使い手が参加し続けること
ここでいう「いじりまわせる」は、完成度が低いという意味ではありません。
伊東は同じ対談で、松本市の信濃毎日新聞松本本社ビルについて、設計開始時点から住民や記者と空間の使い方を話し合った経験を紹介しています。利用者が企画段階から関わることで、施設を自分たちのものとして捉えやすくなるという話です。ただし、対談で紹介された経験を、すべての公共建築で同じ効果が生じるという実証結果とは扱いません。
建築家が完成形を一方的に与えるのではなく、使う人と一緒に更新される建築を考えているわけです。
「普請の現代版」という発想
伊東はこの発言に続けて、それを「日本のかつての普請の現代版」とも表現しています。
ここでの「普請の現代版」は、つくり手だけでなく使い手も建築へ関与するあり方を考える比喩です。建物の構造や安全性を無視して改造してよいという意味ではありません。どこを変更でき、誰が判断するのかという設計・管理上の条件まで考えて初めて、継続して更新できる建築になります。後半は当サイトの実務的な考察です。
同じ対談の別の発言では、昔の暮らしの開放性と現代技術を組み合わせる建築も論じられています。建物の「自然とのつながり」と「人が関わり続ける仕組み」は異なる論点ですが、どちらも完成した形だけで建築の価値を決めない視点として読み比べられます。
出典と判定
主な出典は、今治タオル公式ブランドサイト「伊東豊雄氏×佐藤可士和氏トークセッション」前編(2018年10月18日)です。本人の発言は短い必要箇所に限り、佐藤の発言と伊東の返答、松本市での設計事例をそれぞれ区別して説明しました。対談全文を転載せず、当サイト独自の解釈と適用限界を加えています。
出典状態:出典確認済み。公式の対談記録に、2018年10月18日付で伊東本人の発言と前後の応答を確認できました。記事中の「共創」や運用への応用は、対談の事実を踏まえた解釈であり、一般に検証済みの建築性能を示すものではありません。
引用の判定基準は出典ステータスの読み方にまとめています。