結論――稲盛和夫より、ジャック・ウェルチへの帰属が強い
「自分の運命は自分で管理しなさい。でなければ、あなたはだれかに自分の運命を決められてしまう」という言葉は、日本語では稲盛和夫の名言として流通しています。
しかし今回、稲盛和夫オフィシャルサイトや公式アーカイブでこの文言に対応する一次資料を確認できませんでした。一方、英語の Control your own destiny, or someone else will. は、GE元CEOジャック・ウェルチの言葉として、より早く具体的な資料へたどれます。
1992年にはウェルチを扱った書名になっている
1992年には、Noel M. Tichy と Stratford Sherman によるジャック・ウェルチ研究書 Control Your Destiny or Someone Else Will が刊行されています。少なくとも1990年代初頭には、このフレーズはウェルチを象徴する言葉として扱われていました。
また、Maria Bartiromo の著書 The 10 Laws of Enduring Success には、GE傘下のCNBCで働いていた経験を踏まえて、ジャック・ウェルチが “Control your own destiny, or someone else will.” とよく語っていた、と記されています。
稲盛和夫の思想と似ているからこそ混同しやすい
稲盛和夫にも、自分の心や考え方が人生を形づくるという発言は数多くあります。公式フィロソフィにも「一日一日をど真剣に生きる」「心に描いたとおりになる」といった、自分の姿勢によって人生を切り開く考え方があります。
そのため「自分の運命は自分で管理しなさい」という言葉は、内容だけを見れば稲盛思想と違和感なく結びつきます。しかし、思想が似ていることと、その文章を実際に本人が語ったことは別です。
言葉そのものを読むなら
この言葉は、自分の進路や仕事を他人任せにせず、自分で選択する責任を引き受けるというメッセージとして読めます。
ただし、現実にはすべてを自分だけでコントロールできるわけではありません。環境や制度、他者の意思もあります。「すべてを支配する」という意味より、自分が決められる部分まで放棄しないという意味で読む方が実用的です。
出典状態
誤帰属。 現時点で稲盛和夫の一次資料は確認できず、同じ内容の英語表現はジャック・ウェルチの言葉として1992年の書名に使われ、後年の著書でも「Jack used to say」と記録されています。したがって、少なくとも稲盛和夫の固有の名言として掲載する根拠は弱いと判断します。
なお、この判定は「稲盛和夫が生涯一度も同じ趣旨を語らなかった」と証明するものではありません。現在確認できる資料上、帰属の根拠がジャック・ウェルチ側に強くあるという判断です。
出典状態の基準は名言の出典ステータスの読み方、ほかの監査記事は出典から名言を探すで確認できます。
出典メモ:Noel M. Tichy & Stratford Sherman, Control Your Destiny or Someone Else Will(1992)。Maria Bartiromo, The 10 Laws of Enduring Success でも、ジャック・ウェルチがこの言葉をよく語っていたと記されています。