はじめに
「人間らしく生きるためには七分は真面目人間、三分は不真面目人間で生活するのが『生きる智恵』というべきであろう」。遠藤周作の言葉として知られる一節には、真面目であることを否定せず、真面目一辺倒から少し外れてみるという独特の温かさがある。
ただし、人生の70%を仕事、30%を遊びに振り分けることが科学的に正しいという意味ではない。数値を文字どおり使うより、自分が真剣に取り組む場面と、肩の力を抜く場面をどう作るかを問い直すきっかけとして読みたい。
この言葉は2009年の職場向け広報誌にも遠藤の言葉として引用されていた。一方、本人のどの随筆の何ページから採られたのかは今回も特定できなかった。引用の確認状況と、遠藤の著作全体から見える思想を分けて考える。
出典と引用の確認状況
2009年3月発行の『さくらレポート』第51号には、遠藤周作の言葉として「真面目七分・不真面目三分」が紹介され、仕事の合間の息抜きについて書かれている。2009年にはこの長い文章が流通していたことは確認できる。
名言ナビなどの引用集にも同じ一節が掲載されるが、雑誌名・書籍の版・ページ番号は示されていない。今回、本人の原稿画像や著作の該当ページと、一字一句を直接照合することはできなかった。同じ引用が複数のサイトにあることを原典の確認と数えないため、「要検証」として扱う。
遠藤は『ぐうたら人間学』などの随筆を著し、ユーモアと人間観察を交えた文章を残した。講談社の書誌で1976年の文庫版と内容を確認できる。しかし、この引用が『ぐうたら人間学』の何ページにあるかを確認したわけではないので、出典作品と断言しない。
「狐狸庵先生」というもう一人の遠藤周作
遠藤には『沈黙』や『海と毒薬』など、人間の弱さや信仰を深く描いた小説がある。一方で、狐狸庵という名を使った随筆では、日常の失敗、気弱さ、人の奇妙な行動を笑いとともに眺めていた。真剣な思想と、滑稽な自分を引き受ける姿勢が同居している。
講談社が紹介する『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』は、権威や独善を敬遠し、劣等生のような人に豊かさを見いだす随筆集だ。ここから、真面目な人物だけを模範とせず、不完全な人間にも親愛を向ける視点を確かめられる。
また河出書房新社の『面白可笑しくこの世を渡れ』は、馬鹿馬鹿しいことを真剣に楽しむ遠藤の文章を収録した本として紹介される。遊びが単なる仕事の邪魔なのではなく、生きる視点を増やすという発想は、この随筆世界とも響き合う。
「七対三」の数字をどう読むか
七割と三割という数字は、厳密な測定値というより、真面目さを保ちながらも少しだけ余白を残す比喩として読める。遠藤のエッセイの軽妙さを、人生を採点する新しい規則へ変えないことが大切だ。
たとえば休日にも仕事を考え続ける人にとって、趣味や散歩に没頭する時間は役立つかもしれない。ただし、遊ぶ時間を増やせるかどうかは、仕事の条件や家族の事情にも左右される。余白を作れない人を自己管理不足と責めることは、この言葉を読む目的と逆になる。
さらに、集中したい期間には真面目さの比重が高くなることもあるし、療養中には休息が優先される場合もある。人生のすべての時期へ同じ比率を割り当てなくてもよい。数字より大切なのは、自分の状態に目を向けることだ。
暮らしと仕事にどう生かすか
毎日を予定だけで埋めてしまうなら、目的のない時間を少し残してみる方法がある。読む本を選ばず書店を歩き、まだ知らない分野に触れる。それは遠回りかもしれないが、成果を直ちに求めない経験から生まれる発見もある。
チームで働く場合にも、相手がいつも完璧に振る舞うことを期待しすぎない方が、相談しやすい環境を作れることがある。失敗を笑い話にできるときと、真剣に対応しなければならないときは違う。ユーモアは責任を回避するためではなく、互いの人間らしさを認めるために使いたい。
ただし、休息を取ることと、人へ迷惑をかけることを混同しない。自分だけが自由になろうとして周囲へ負担を押しつければ、新しい問題が生じる。気を抜くことにも、他人の時間を尊重する視点が必要だ。
まとめ・出典と留保
遠藤周作の「七分真面目、三分不真面目」は、遅くとも2009年には長い文章として引用されていた。しかし、本人の著作の版・ページで逐語の一致を確かめたわけではないため、出典分類は「要検証」とした。
遠藤の『ぐうたら人間学』などには、権威主義や独善から離れ、人間の弱さと滑稽さに目を向ける随筆の世界がある。数字を成功の方程式にせず、真面目な自分を大切にしながら、余白も失わないという読み方を提案したい。
出典の手掛かり:『さくらレポート』2009年3月号(引用の流通を示す資料。PDFの実画面照合は未実施)/名言ナビ・遠藤周作の引用集。関連著作の書誌:講談社『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』/河出書房新社・遠藤周作の随筆一覧。関連記事:「好奇心がなくなったらおしまい」/出典状態ガイド。

気を張り続けずに息抜きするという点では、ことわざ「鬼の居ぬ間に洗濯」も参考になります。遠藤周作の「七分真面目、三分不真面目」が自分の暮らしに余白をつくる考え方なのに対し、こちらは気兼ねする相手がいない間の解放感を表す言葉です。