大泉洋「ボロボロでも続ける美学」|TEAM NACSと俳優業に見る継続の意味

はじめに

「辞める美学よりも、ボロボロになっても続ける美学のほうがカッコいい」。大泉洋の言葉として広まる一節は、長く仕事を続ける人の思いを表している。だが、本人は同じ取材で、俳優という仕事からいつか身を引く可能性も語っていた。二つの発言を合わせて読むと、ただ我慢して続けるという話ではないことが分かる。

大泉が続けたいと語ったものの一つは、北海道を拠点とする演劇ユニットTEAM NACSだった。仲間と喧嘩をしても活動を続けることに、どんな意味があるのか。作品を一度きりの成功で終わらせず、時間をかけて育てる価値を考えてみたい。

ただし「続ける美学」を病気、過労、危険な職場に耐える根拠にしてはいけない。続ける選択と、離れる選択には別々の条件がある。何を続けたいか、なぜ続けたいかを区別するために、原典のインタビューを確かめよう。

原典は2014年のオリコン本人取材

元の言葉につながる発言は、2014年5月22日公開のオリコンによる大泉洋の仕事論の取材記事にある。2017年に公開された「働きビト」のアーカイブにも、同じ取材の長い本文が掲載されている。仕事を続ける姿勢について、質問者とのやり取りの中で本人が答えた記録を確認できる。

大泉は、何かに長い時間をかけることで初めてできるものがあり、時間を積み重ねる価値が大きいと説明した。そのうえで、TEAM NACSをよい時期に解散して伝説化する可能性にも触れ、喧嘩しながらでも続ける方を自分は選びたいと述べている。

ただし、旧記事の「辞める美学よりも…カッコいい」という短い日本語は、取材での長いやり取りを縮めた流通形である。趣旨は一致していても、一字一句同じ直接の発話として示すことはできないため、出典状態は「意訳・文言変化」とする。

TEAM NACSにとって継続とは何か

TEAM NACSは、北海道で活動を始めた演劇ユニットであり、大泉にとって仕事仲間との関係そのものでもある。取材当時、活動は間もなく20年になると紹介されていた。続けることの対象は個人の名声だけでなく、仲間と作ってきた場所だった。

良い時期に解散すれば「昔は面白かった」と記憶に残るかもしれない。一方、続ければ失敗する公演もあり、意見が合わず気まずくなる日もある。継続とは、過去の評判を守るだけでなく、次の出来事を引き受ける選択になる。

ファンにとっても、昔の作品が優れていることと、今も活動が続いていることは違う価値を持つ。本人は、どんな形でも活動していることを喜んでくれる人がいると語った。続ける理由に、自分以外の人とのつながりが含まれている点が重要だ。

俳優の仕事については辞表を持つ覚悟も語った

一方で大泉は、俳優を続けることを無条件の義務とは考えていない。取材で、演技はとても難しく、後悔することも多いため、いずれ自分で見切りをつける日があるかもしれないと話した。仕事を続けたいと思うことと、絶対に辞めないと誓うことは違う。

本人は、スーツの内ポケットに辞表を入れて仕事を続けるような感覚だと例えている。これは実際に退職届を常時携帯したと検証した話ではなく、役者としての厳しさを意識しながら挑む心構えを表す比喩として読むべきだ。

それでも少しでもよい演技をしたいと思う気持ちは強くなっていたという。辞める可能性を認めることは、今日の仕事をいい加減にするという意味ではない。続けるかどうかを自分で考えながら、今取り組むものに責任を持つという態度が見える。

続けることが目的にすり替わる危険

長年続けてきた仕事や活動は、時間を使ったというだけで手放しにくくなる。過去の投資を惜しむ気持ちが、今の判断を鈍らせる場合もある。続けてきた年月を尊重することと、それだけを理由に将来を決めることは別だ。

例えば一つの事業が行き詰まったとき、何を残して何を変えるべきかを考えられる。会社を存続させることが大事でも、採算の合わない方法や不適切な働き方まで守る必要はない。目的を守るために、手段を変える勇気も継続の一部になる。

健康や安全を損なう環境から離れることは、弱さではない。相手に暴力や過重な負担を求められているなら、まず保護や相談が必要な場合もある。本人が語った芸の美学を、他人に犠牲を求める規範へ変えないことが大切だ。

まとめ・出典確認

大泉洋が重視した継続は、TEAM NACSという仲間との活動、時間が積み上げるもの、演技を少しでもよくしたいという思いと結びついている。同じ取材にある「辞表」の比喩を知ると、継続と撤退を自分で選ぶ厳しさも見えてくる。

現代の仕事では、続けるための条件を点検しながら、守る価値があるものを選び直す姿勢に読み替えられる。これは編集上の応用であり、大泉が経営論や健康管理の一般法則を述べたということではない。流通する短い名言と、本人の長い発言との違いを残しておきたい。

原典:オリコン「大泉洋、俳優最後の日への覚悟ある『常に懐に辞表を』」(2014年5月22日)/オリコン『働きビト』Vol.11(同取材の長文アーカイブ)。関連記事:大泉洋の「人生半身浴」と東京進出/「自分を追い込まないでいい」。出典ステータスの読み方。

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