大隅良典「自分が面白いと思った道を突き進んでほしい」|2017年の本人対談を読む

「自分が面白いと思った道を突き進んでほしい」。ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典の言葉です。出典を調べると、日本科学協会が2017年4月11日に本人と行った対談記録の12ページに、今回の文章がそのまま掲載されています。そこでは、一つの研究に夢中になることだけでなく、将来を完全に計算できなくても、その時の関心と周囲の支援を生かしながら研究を続けてきた経験が語られています。

出典は2017年4月11日に収録された日本科学協会の対談

日本科学協会『笹川科学研究助成30周年記念』の対談「誰もやらないテーマを楽しみながら追求する」(PDF)には、東京工業大学の大隅良典栄誉教授と、笹川科学研究助成の高橋正征事業委員長の会話が掲載されています。資料末尾に、2017年4月11日に東工大すずかけ台キャンパスの大隅研究室で収録し、同月21日の研究奨励の会で上映されたものに手を加えて掲載したと記されています。

印刷ページ12ページで高橋は、大隅が若い頃に研究の方向をどう選んだのかを尋ねます。大隅は、将来を綿密に設計して歩んできたというより、自然な流れで研究を続けることが許された経験を振り返り、一つでも本当に面白いと思う対象を持つことの大切さを語ります。その途中に対象の短い一文があります。

これは名言集の再掲だけでなく、質問者・発言者・収録日・掲載媒体・掲載ページが分かる直接取材です。ただし、対談記録は掲載時に編集を加えたと明記されているため、音声の一字一句を完全再現した未編集録音であるとまでは言いません。

「面白い」の具体例は、酵母と液胞の研究

対談の前半で、大隅は大学院時代に大腸菌の研究をしていたこと、米ロックフェラー大学でマウスの受精卵に取り組んだこと、やがて酵母を研究材料にするようになったことを説明します。海外での研究には楽しかったことだけでなく、何をすべきか分からず苦しかった期間もあったと振り返っています。

1977年に東京大学へ戻った際、所属研究室で酵母の研究を続けることを認められました。さらに、研究室の近くで液胞の研究をしていた研究者との出会いも、その後の研究の出発点の一つだったと説明しています。

つまり、大隅の歩みは、最初から『オートファジーを研究する』と完成した計画を持ち、一度も揺らがず突き進んだ物語ではありません。興味、偶然の出会い、所属先の理解、研究の積み重ねが重なって、後から大きなテーマへつながったことが分かります。

誰も注目しなかった液胞に、なぜ関心を持ったのか

日本科学協会の対談では、酵母の液胞が単なるごみためではないはずだと考えたことが語られます。当時は液胞へ注目する研究者が多いとは言えず、大隅は競争の激しい主題よりも、他の人が取り組んでいない問題を調べることを好んでいたと説明しています。

ノーベル賞公式の2016年の発表によれば、その研究は細胞の構成成分を分解・再利用するオートファジーの仕組みの理解へつながりました。観察に加え、酵母の遺伝子を調べる研究などが成果を支えています。

しかし、面白いと思えば自動的に新発見が生まれるわけではありません。問いを育てるには、実験を設計し、観察を重ね、必要な技術を身につけ、共同研究者の意見を聞くことが欠かせません。

「突き進む」は、周囲の助けを借りないことではない

対談には、研究を続けられた条件として、上司が酵母の研究を認めたことや、若手への助成の必要性への言及があります。大隅は、最初から大きな研究グループと高額の資金が必要とは限らず、小さく始めた成果を大切な段階で支援する仕組みが望ましいと話しています。

面白いテーマを見つけても、研究を行う時間や装置がなければ十分に取り組めないことがあります。好きなことを続けるためには、個人の情熱だけではなく、その関心が長い時間をかけて育つための環境も大切です。

本人は「40年間、同じ一つを単調に繰り返した」と言っているのか

対談の12ページでは、液胞からオートファジーへと研究を進めても、完全に解明したという地点には達しておらず、新しい問いが現れると話しています。長く研究を続けたことに自分でも驚きながら、なお理解すべきことが残ると説明しています。

同じ対象を調べ続けることは、同じ作業をただ繰り返すことではありません。新しい観察や研究手法から問いが変わる場合があります。好きなことだから苦労しないというわけでもなく、分からなさを抱えながら調べ続ける営みです。

現代の仕事や学びでどう受け取れるか

興味のある分野を見つけたとき、周囲の人と違う道を選ぶことに不安を感じるかもしれません。しかし、関心だけで職業や生活の条件をすべて決める必要もありません。今ある技術、暮らしに必要な収入、家族や健康の事情など、個人によって選べる範囲は違います。

「面白いと思った道」を選ぶことは、必ず会社を辞めたり大きなリスクを取ったりすることではありません。今の仕事の中で異なる問いを持つ、小さな実験を始める、学ぶ機会を作るなど、選び方は複数あります。

  • 興味:何度も考えたくなる問いや現象はあるか。
  • 確認:その対象について、すでにどんなことが分かっているか。
  • 環境:使える時間や資源を踏まえて、無理なく調べ始められるか。
  • 対話:相談できる人や、異なる視点を持つ人はいるか。

これらは当サイトによる実践的な整理で、大隅が対談で四項目の行動指針を示したわけではありません。

まとめ:自分の関心を育てた研究の歩み

「自分が面白いと思った道を突き進んでほしい」は、2017年4月の大隅良典本人への対談記録に確認できる言葉です。対談全体を読むと、個人の好奇心だけではなく、研究材料を変える試行錯誤や、周囲の理解、研究費による支えなどの具体的な条件が見えてきます。好きなことをただ続ければ成功する、という標語ではなく、問いを育てられる環境と行動について考える言葉として読みたいところです。

原典・参考資料

出典状態:原典確認済み。日本科学協会が収録・編集した大隅良典本人の対談記録の印刷12ページに、対象の一文を確認しました。収録日時と掲載媒体も明確です。音声からの未編集逐語起こしとまでは断定しません。出典状態の説明もご覧ください。

「研究の競争より発見の喜び」については、大隅良典「一番乗りを競うより発見の喜びを」で取り上げています。

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