はじめに
「財閥系ではなく、これといった資本の背景もない。となれば、そのハンディを補うのは、なんとしても国産技術を確立するのだという初心、これこそが日立精神であり、それなくして日立はありえない」。この長い言葉は、日立製作所創業者・小平浪平の言葉として紹介されています。
今回の調査では、この定型句を小平の言葉として掲載する後世の伝記的資料は確認できました。一方、本人の講演・書簡・社内文書など、この文章そのものの一次出典までは特定できていません。
ただし、「国産技術の確立」を小平の創業時の志として日立自身が現在も公式に位置づけていることは確認できます。したがって、言葉の逐語的真正性と、思想内容の真正性は分けて読む必要があります。
日立公式が確認する「国産技術」の志
日立グループ・アイデンティティでは、小平浪平が外国製品や外国技術への依存が大きかった時代に、自分たちの技術力を信じ、国内でモノづくりを行うチームを作ったことを紹介しています。
現在のMISSIONである「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」も、その創業時の志を受け継ぐものとして説明されています。
つまり、自主技術・国産技術を確立し、それを社会へ役立てるという思想自体は、後世の名言サイトが作ったものではありません。
長い定型句は後世の伝記で確認できる
2015年の『事業構想』による小平浪平の紹介記事では、ほぼ同じ形の文章が小平の信念として引用されています。
しかし、その記事自体は小平の死後に書かれた伝記的な文章です。引用元となった一次資料名までは示されていません。
そのためこのサイトでは、「小平の創業思想を表す言葉として後世資料に確認できるが、逐語的な一次出典は要確認」と扱います。
資本がないからこそ、技術を自分たちで作る
この言葉の中心にあるのは、「不利だから諦める」ではなく、「不利だからこそ何を強みにするか」という発想です。
大きな資本背景がないなら、他社と同じ条件で戦うのではなく、自主技術を磨く。それは現在で言えば、資本力や知名度で劣る組織が、自社固有の技術・知識・顧客理解を競争力へ変える考えにもつながります。
ただし、後世の成功物語から「創業者は最初からすべてを見通していた」と単純化しないことも重要です。理念は歴史の中で編集され、継承されます。
まとめ
「国産技術を確立する初心こそ日立精神」という内容は、小平浪平と日立の創業思想を理解するうえで重要です。
一方、現在流通する長い定型句そのものについては、本人の一次資料まで確認できていません。
そこで、思想内容は日立公式資料で裏づけられる/定型句の逐語的出典は要検証という二段階で扱います。
出典メモ:日立グループ・アイデンティティ「MISSION/日立創業の精神」。長い定型句は『事業構想』2015年7月号の小平浪平紹介記事などで確認。本人一次資料の該当箇所は未特定。
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