「高い塔」と「新たな水平線」|川口淳一郎の講演記録から考える小さな挑戦

高い塔を築けば、これまで見えなかった水平線が見える。川口淳一郎の言葉として広まるこの比喩は、考えるだけでは得られない視点を、試してつくるという問いを投げかけます。ただし、当サイトで掲載してきた一文と、確認できた記録の文言は完全には一致しません。

JAXAの研修記録で確認できること

JAXA宇宙教育センターが公開する2011年度の教員研修記録には、2012年3月24日、釧路市こども遊学館で川口淳一郎が「『はやぶさ』スペシャル」の講師を務めたことが記されています。同記録では、川口を小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャとして紹介しています。

第4回の受講者の感想には、「高い塔をたててみなければ、新たな水平線は見えない。」という言葉に感銘を受けたとの記述があります。これは川口の講演について参加者が残した感想です。本人の著書や講演の逐語録を照合した結果ではありません。

旧掲載の「見えてこない」と、記録の「見えない」には文言の違いがあります。意味が近くても、一字一句そのままの発言とは扱えません。この資料から、言葉を初めて述べた時期や、唯一の原形まで確定することもできません。

塔を建てるとは、見方を変える手段をつくること

この比喩では、塔を建てる前と後で、見える範囲が変わります。人生に引き寄せて読むなら、「自分には何が見えていないか」と考えるだけでなく、見える範囲を変える具体的な手段を用意するという解釈ができます。以下は本サイトの読み方であり、講師の意図を逐語録で確認したものではありません。

たとえば、仕事の進め方が行き詰まったとき、完成品を一度に作ろうとする代わりに、小さな試作品を見せて反応を聞く。学びたい分野があるなら、短い課題を一つ試す。頭の中で想像した難しさと、実際に困った点の違いが分かるかもしれません。

ただし、挑戦すれば必ず成功するという法則ではありません。安定した仕事の中でも、新しい技能や視点を得ることはできます。危険や負担を大きくすること自体が、塔を高くすることとは限らないのです。

小さな挑戦を、次の問いにつなげる

旧記事が提案していた「小さな挑戦」から始める考え方は、この比喩を日常で読むうえでも役立ちます。大きな決断を急ぐ前に、何を知りたいのか、どこまでなら試せるのか、どの時点で立ち止まるのかを決めておくと、行動を振り返りやすくなります。

試した後には、「成功したか」だけでなく、「始める前には見えていなかった何が見えたか」を問い直してみる。新しい情報が得られなかったなら、方法を変える、経験者に聞く、今回は見送るという判断も可能です。挑戦の価値を、無理を続けることと結びつけない読み方です。

出典と確認範囲

JAXA宇宙教育センター「道東科学教育支援ネットワーク(DoToねっと)・たんちょう先生の実験教室」2011年度研修記録:構成表、第4回の受講者の感想、授業の感想・メモを確認しました。研修年度は2011年度ですが、第4回の実施日は2012年3月24日です。

出典状態:講演についての参加者記録を確認。旧掲載の厳密な文言と初出は要検証。 講演の録音、逐語録、著書での同文の掲載は未確認です。現代の講演記録からは短い一節だけを引用し、解説と応用は本サイトの文章として記しています。

発見の条件を別の角度から考えるには、飯島澄男の講演にみる、発見を支える五つの条件へ。確認範囲の区分は出典ステータスの読み方を参照してください。

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