河原成美「日本の食は世界各国に広がりつつある」|2009年の一風堂海外戦略

「日本の食は世界各国に広がりつつあります」。一風堂創業者・河原成美のこの発言は、海外進出の可能性を語った2009年の本人インタビューに登場します。現在では日本の料理が海外で親しまれる例も数多く知られていますが、2009年に語られた言葉をそのまま2026年の市場予測へ使うことはできません。どの時代に、どんな事業計画の下で語られたのかを確認して読み解きます。

原典は2009年の一風堂・世界戦略インタビュー

ITmediaビジネスオンラインが2009年9月4日に公開した「ニューヨーク店は成功……そして世界戦略の成算は?」の2ページ目に、河原成美本人の発言が掲載されています。取材・文は嶋田淑之。記事は同年9月にINSIGHT NOW!でも再掲載されています。

2009年当時、一風堂はニューヨークへの出店を終え、シンガポールやロンドン、その先の各国への展開を構想していました。取材者が海外戦略の見込みを尋ねたところ、河原は世界の日本食レストランの広がりに言及し、今後は本物の味や体験を求める傾向が強くなるのではないかという見通しを語っています。

つまり、この一節は観光パンフレットのような日本食賛美ではなく、海外へ出店する企業が市場をどう捉えていたかを説明する発言です。記事の他の部分では、従業員の育成や後継者づくりにも言及しており、成長戦略を人材の準備と併せて考えていたことがわかります。

2009年の「広がりつつある」は当時の認識

日本の食は世界各国に広がりつつあります。

原典には当時、海外に約2万件の日本食レストランがあると河原が述べた数字も出てきます。ただし、この記事だけではその集計方法、対象とする店舗の定義、調査主体はわかりません。数字を2026年の現況として紹介したり、厳密な公的統計だと断言したりするべきではありません。

海外へ日本食が広がるといっても、料理の種類、地理的な分布、店舗の運営主体、顧客の好みは一様ではありません。寿司、麺料理、定食などが同じ速度で普及するとも限りません。河原が2009年に語ったのは、事業家としての市場観であって、すべての地域についての実態調査ではないのです。

「本物志向」は何を意味するのか

河原は、日本食を知る人が増えるほど、より本格的な体験を求める人も増えると見込んでいました。しかし「本物らしさ」は一つの答えで決まる言葉ではありません。食材や調理技術を日本に近づけること、提供の仕方を現地の文化に合わせること、料理の由来を伝えることなど、複数の意味が考えられます。

飲食店の海外事業では、現地の顧客が求める味や価格、食材の入手、法令、衛生管理、スタッフの育成など、さまざまな条件が関わります。現地の文化を無視して日本と同じものを押し付けることが、本格的な店づくりの唯一の方法だと考えるべきではありません。

出店数を増やすだけではブランドにならない

海外へ進出する理由が「海外でも流行っているから」だけだと、長く続く事業になるとは限りません。なぜその都市で出店するのか、誰が繰り返し利用してくれるのか、どんな体験が店の価値なのかを考える必要があります。

河原の取材では、ニューヨークへ出店した経験をもとに次の地域を検討していました。現地の飲食市場へ入ることは、新しい顧客に出会える機会である一方、運営するための人材や資金を確保し続ける課題でもあります。

他の日本食にも同じ戦略が通用するか

日本食という共通項があっても、各企業が持つ技術や仕入れの仕組み、ブランドの認知度、経営規模は異なります。ラーメン店の成功を、そのまま寿司店や和菓子店の事業計画へ転用することはできません。料理と体験を現地でどう届けるかを個別に調べる必要があります。

一方、海外の消費者が自国とは異なる食文化に触れることを楽しむなら、料理の背景を説明し、実際に味わってもらう機会を作ることには意味があります。店舗そのものが異文化を知る入口になる可能性もあるでしょう。

2009年の見通しと、2026年の状況を混同しない

2009年の取材から確実に言えるのは、当時の河原が海外で日本食の需要を見込み、一風堂の事業を広げようとしていたことです。そこから2026年現在の店舗数、売上高、進出国、事業の成功率を自動的に導くことはできません。

もし現在の一風堂の事業規模を調べるなら、運営会社の最新の決算資料や店舗情報を、同じ日付・同じ指標で確認する必要があります。昔の予測がどこまで実現したのかを知るには、今の数字との別の検証が必要です。この文章では、その未実施の比較を実施済みのようには表現しません。

「世界に広がる」を仕事へ応用するなら

自社の製品やサービスを新しい地域へ届けようとする際には、まずどんな人が価値を感じているかを確認する。現地にある代替手段を調べる。最初からすべての地域へ広げるのではなく、小さな市場で体験を改善していく方法を検討できます。

ただし、これらは当サイトによる現代的な事業開発の応用であり、河原が2009年の取材で同じ手順をすべて示したという意味ではありません。時代も事業の条件も変わるため、当時の判断を万能の成功法則へ変えないことが大切です。

同じ記事にある人材育成の話も読む

同じインタビューには、後継者を育てる「河原塾」や、子どもたちへラーメンを教える「厨房車ワークショップ」も登場します。海外で事業を広げることと、店を運営する人材を育てることを別々に考えない姿勢がうかがえます。

海外へ出店するという目標が魅力的でも、その実現には日々の店舗を支える人の仕事が必要です。海外進出の数値目標だけでなく、社員が学び成長する機会にも目を向けることで、当時の河原の経営についてより立体的に理解できます。

出典と確認範囲

出典状態:出典確認済み(本人への取材記事)。2009年9月4日公開のITmediaビジネスオンラインで、河原が日本食の海外での広がりと一風堂の世界戦略を語ったことを確認しました。掲載された市場規模の数字と予想は当時の発言として扱い、2026年の市場データとして流用していません。原音は未照合です。

原典:ITmediaビジネスオンライン「ニューヨーク店は成功……そして世界戦略の成算は?」 / INSIGHT NOW!再掲載。関連記事:「河原塾」と後継者の育成 / 「厨房車ワークショップ」 / 出典ステータスの読み方。

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