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『透明人間』1897年原作のあらすじと結末|グリフィンの最後と残された研究ノート

はじめに――『透明人間』の主人公は最後まで透明なのか

誰にも見えなくなれば、どんな場所にも忍び込める。H・G・ウェルズの『透明人間』は、そんな発想から始まるように見える小説です。しかし1897年の原作で描かれるのは、透明化を成功させた科学者の愉快な冒険ではありません。目に見えない力を得た男が、周囲の人々を傷つけ、最後には自ら破滅する物語です。

透明人間の名前はグリフィン。彼は科学的な実験によって身体を見えなくすることに成功しますが、元の姿へ戻す方法を確立できません。技術的に実現できることと、その技術を安全に使いこなせることは別だと、物語は繰り返し示します。

この記事では1897年刊の原作について、Project Gutenbergの英語全文とWikisourceの1897年版書誌を参照します。映画やドラマの透明人間とは人物像や結末が異なる場合があるため、原作の最終章とエピローグを基準に説明します。内容は結末まで含みます。

宿屋に現れた包帯の男――グリフィンの登場

英国の村アイピングに、真冬にもかかわらず顔を包帯で隠し、奇妙な眼鏡や衣服を身につけた男が現れます。彼は宿屋で部屋を借り、実験道具を持ち込み、人との接触を避けようとします。近隣の人々が彼を疑うのは、単に外見が変わっているからだけではなく、不可解な行動や出来事が続くためです。

宿屋の女主人たちは、男の姿や部屋から聞こえる音を不審に感じます。やがて人のいない場所で家具が動くなど、不思議な現象が起こります。読者もはじめから研究の事情をすべて知らされるわけではなく、村の人々と同じように少しずつ謎へ近づく構成です。

男が衣服を脱ぐと、そこには姿の見えない身体がありました。透明になったのは服ではなく本人の肉体であるため、着ているものは外から見えます。透明な身体でも、生活するには衣服や食事が必要で、完全な自由を得たわけではないという設定が、後の困難につながります。

透明化の実験――万能の能力ではなかった

後半でグリフィンは、かつて大学で研究していた頃のことを医師ケンプに説明します。光の屈折や物体の見え方について考え、身体を透明にする方法へたどり着いたと語ります。実際に人体を透明化できる科学技術の説明書ではなく、19世紀の科学的な想像力を基にした小説の仕掛けです。

ところが透明になってみると、寒さや飢え、人にぶつかる危険など、思いもしなかった不便が生じました。食べた物も、すぐに同じように透明になるわけではありません。見えなくなる力があっても、身体を持つ人間としての制約から自由にはなれないことが繰り返し描かれます。

さらに彼は、透明化の成果を他者に理解してもらうことが難しく、元の姿へ戻るための研究にも行き詰まります。追い詰められたからといって、他人の財産を奪ったり脅したりすることが正当化されるわけではありません。研究の困難と、他者への暴力を選んだ本人の責任を分けて考える必要があります。

マーヴェルとケンプ――他人を利用する計画

グリフィンは道中で出会ったトマス・マーヴェルに協力を迫り、衣服や金銭、研究ノートを運ばせようとします。マーヴェルは恐怖を感じながら従い、何度も逃げる機会を探します。対等な仲間として協力していたのではなく、透明人間の脅迫によって従わされていたという関係です。

やがてグリフィンは旧知の医師ケンプの家へ逃れ、自らの正体と計画を明かします。彼は透明性を使い、恐怖によって人々を支配しようと考えていました。自分だけが他人を見られ、他人から見られないという力を、他者を支配する手段に変えようとするところが物語の危険性です。

ケンプはその計画に協力せず、警察に知らせます。その後、グリフィンはケンプを標的にして脅迫し、追跡の末に市街地へと騒ぎが広がります。力を持つ人の要求を断ることと、周囲の人々の安全をどう守るかという難しい判断が、終盤の緊張を生みます。

原作の結末――グリフィンはどうなったのか

最終章「The Hunter Hunted」では、ケンプを追い詰めたグリフィンが、集まった人々との激しい争いで取り押さえられます。彼の姿はまだ見えませんが、抵抗の中で致命的な傷を負い、やがて息をしなくなります。透明人間が誰にも見つからないまま遠くへ逃げ延びた、という結末ではありません。

人々が倒れた身体を見ていると、透明だった手足から少しずつ形が浮かび上がり、最後には全身が見えるようになります。そこにあったのは、白い髪と眉を持つ若い男の亡骸でした。死によって身体が再び見えるようになるという展開が、彼の孤独な最期を強調します。

この場面は、ケンプが単独で完璧な科学的な解決策を発明して倒した話ではありません。多数の人々の抵抗の中でグリフィンが死ぬという、暴力的で後味の重い場面です。主人公の発見の素晴らしさと、最後に選んだ行為の悲惨さを切り離さないことが重要です。

エピローグと原典――秘密のノートは誰の手に

物語には最終章のあとに「The Epilogue」があります。かつてグリフィンに利用されたマーヴェルは、のちに宿屋の主人となり、透明人間と出会った経験を語っています。グリフィンが死んだあとも、彼の研究の影響がすべて消えたわけではありません。

実はマーヴェルは、透明化の秘密を記した三冊の研究ノートを隠し持っています。しかし、その難解な内容を理解できないまま、秘密を自分だけのものにしたいと夢想しています。危険な技術の資料が残っても、それを正しく理解し、管理できる人がいるとは限らないという皮肉が、最後に置かれています。

原典:H. G. Wells『The Invisible Man』Project Gutenberg英語原文(第28章・エピローグを含む)、Wikisource・1897年原作の版と目次。同じウェルズによる『宇宙戦争』原作の結末や、『ジキル博士とハイド氏』の変身と責任も参考になります。1897年原著は著者1946年没により日本の通常の著作権保護期間を経過していますが、現代の日本語訳や映像作品には別の権利があります。独自要約のみを掲載しています。

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